生きていた 晴人side ページ6
にっかり「主、丁度良かった。このお茶を運んでくれるかい？」
「あぁ。分かった」
お盆を受け取り、大広間に運んでいく。
執務を終えて一息つける昼餉時。各々は昼餉の準備をしていた。
玄関の方向を見つめ、短刀たちが何やら眉を下げて話しているのが視界に入る。
「お前ら、どうしたんだ？」
愛染「午後にAとする遊びは何にしようか話してたんだよ」
後藤「けど最近、俺らが遊びに誘っても断ることが多くなったんだよ。前は自分から遊ぼうって誘って来てたのに」
乱「話しかけてもすぐに何処かに行っちゃうし……」
そういえば最近、一部の刀剣からAとあまり会話が出来ないと聞いた。こちらから話しかけようとしても、何かと理由をつけて去って行ってしまうんだとか。
Aが帰って来たら話してみるか。
蛍丸「何か悩みでもあるんじゃない？」
今剣「それならぼくたちのでばんですね！ ぼくたちでげんきづけてあげましょう！」
前田「Aさんがもう少しで帰って来ますし、玄関で待っていましょう」
秋田「玄関まで競走ですよ〜！」
五虎退「ま、待ってください……！」
小夜「……僕も」
ドタドタと玄関へ向かっていく短刀たちの背中を見つめ、微笑む。
一期「主殿、どうかなされましたか？」
「いや、アイツら、本当にAのことが大好きなんだなって思って」
お茶を机に置いた瞬間、本丸内が嫌な空気に包まれた感覚がした。
しかしそれは一瞬のことで、あまり気にも留めずお盆から机へとお茶を置いていく。
高橋「邪魔するぜ」
聞き慣れないドスの効いた低い声に、和やかだった空気が一変して張り詰めた。
声のする方に視線を移すと、お茶を乗せていたお盆を落としてしまった。
「お前は……！」
脳内から一枚の写真が引き出される。
禍々しい邪気。大柄で、鋭い目つきのスーツを着た男。
見覚えがあった。なぜなら森崎さんが生前、この男の写真を見せてくれたからだ。
この男は正に、Aを苦しめた高橋だった。
生きていた。死んだと思われていた高橋が。
不気味に笑うその姿は悪魔そのものだった。
高橋の後ろには、横たわっている短刀たちの姿があった。
「っの野郎……！」
殴りかかろうとしたその時、背後からバタバタと倒れる音が複数する。
振り返ると、刀剣たちが糸が切れたマリオネットのように倒れていた。
今、何が起こっているんだ。
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作者名：まじゅっちゃん | 作成日時：2021年7月1日 17時
