知らない ページ32
『おにーさーん、隠れてないで出て来て？ それで、さっさと斬られて死んでくれる？ 人を助けるためだと思ってさぁ』
審神者を斬ろうとすると、鶴丸国永によって阻止される。
鶴丸「おい！ 正気に戻れ！」
まだ動けるの……！？ さっき一通りの刀を中傷以上にまで追い込んだのに……！
『邪魔しないで。そこを退く気が無いなら、また貴方の血で赤く染めてあげる。そうしたらもっと鶴らしくなれるでしょ？』
懐に素早く入り込み、腹部を斬りつける。
深くは斬れなかったか……まぁ、重傷よりの中傷だし別に良いか。
三日月「鶴までやるとは……見事だ」
声のする方に視線を移すと、三日月宗近がうっすら微笑んでいた。しかし殺気を隠す気は無いらしくダダ漏れである。
コイツだけは手こずったんだよなぁ……
素早く刃を振りかざし、何度も交える。
『天下五剣がその程度？ 随分と落ちたもんだね』
挑発気味に言うと、美しい顔の眉間にシワが寄せられていた。
三日月「落ちたのはお主だ。A」
『なっ……！？』
懐に入り込めた。そう思い油断したその一瞬。顎を掴まれ、瞳の中の三日月と目が合う。刹那、心臓が大きな音を立てて身体が硬直した。
『え』
その隙に脇腹に蹴りを入れられ、数メートル先に吹っ飛ぶ。
受け身の体制が取れず、肌と地面が何度も触れ合う。
頭の中でAという名前が響く。
『Aって誰だよ……私知らないし……！』
私はAじゃない。零壱だもん。
地面に本体を突き刺し無理やり立ち上がるが、視界が歪み、頭が割れるように掻き乱される。
『主……様……主様ぁ……』
ふらつく足取りで、主様に近付く。
主様ならこの痛みを和らげてくれるかもしれない。毎日薬を投与してくれるんだ。それにさっきの強化剤があるなら鎮痛剤も持っているに違いない。
主様の袖口を引っ張ると、ぐるりと視界が反転した。
『がはっ』
そして気が付いたら、主様に首を絞められていた。
何、で……？
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作者名：まじゅっちゃん | 作成日時：2021年7月1日 17時
