悪者退治 ページ24
此処に戻って来てから約一ヶ月。
時が経つのは早いもので、以前会った男性のことなど忘れかけていた。
『主様、これは一体……』
そんな中、私が今手にしているのは手榴弾だ。
高橋「お前、この間晴人ってやつの所の本丸に行ったろ」
『はい』
あの男性か。行ったというか、正確には連れて行かれたと言った方が良いのだろうけれど、そんなことを今此処で口にしてしまえば火に油を注ぐことになるので返事だけをする。
高橋「今夜二時に、あの名取晴人の本丸に行ってこれで爆破させろ」
そう言われた瞬間、何故だか身体中から汗が吹き出して止まらない。
私にとっては生きていようが死んでいようが構わない人間のはずなのに、止めなければいけない、その男性を殺してはいけないと脳が警鐘を鳴らしている。
『あの、別にここまでする必要はあるのでしょうか？』
思わず質問を投げかける。
高橋「あ？」
『主様がその男性にどんな被害を受けたのかも存じませんし、ただ悪い人、というだけで一括りにしてしまうのもちょっと……あの人がそこまで悪い人には思えなくて……』
口答えしてはいけないと分かっているのに、考えれば考える程男性を擁護する言葉が口から溢れ出す。
あの本丸に居た時、男性からは何も悪い雰囲気は感じられなかった。寧ろ優しい人間なんだと直感で悟った。
高橋「無能なブレードの分際で俺に口答えしてんじゃねぇよ」
しまった……口走りすぎた……！
そう思った時にはもう遅く、主様の拳が左頬にめり込む。
『あがっ』
成す術も無く、床に横たわると首筋にチクリと一瞬の痛みがあった。
いつもの注射だ。
高橋「お前は黙って、俺の言うことさえ聞いていればいいんだよ」
『はい。承知致しました』
深々と頭を垂れると、先程まで男性を擁護していたのが馬鹿らしく思えてきた。
そうだよね。主様を傷つける奴らはみーんな悪者だもんね。よーっし。悪者退治、頑張るぞー！
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作者名：まじゅっちゃん | 作成日時：2021年7月1日 17時
