跡 晴人side ページ18
「……っはぁー。レポート終わんねぇー」
執務室にて。俺は大学のレポート提出に追われていた。
パソコンの画面から目を離し、グッと大きく伸びをする。
扉の隙間から小夜がひょっこりと顔を出し、こちらの様子を伺っていた。
「ん？ 小夜、どうした？」
小夜「あの……昼餉の後からずっと仕事してるから、燭台切さんが息抜きにって……」
そう言って差し出されたのは、俺の大好物でもある草餅だった。
「おぉマジか。ありがとな」
草餅を半分に割り、小夜に片方を渡す。
小夜「……え？ 良いの……？」
「あぁ、勿論。小夜もこれ、好きだろ？」
燭台切の作ってくれた草餅を堪能していると、ゲートが開く音がした。
おいおい帰りが早くないか？ 出陣して十分も経ってないぞ？
今回組んだ第三部隊の編成は全体的に練度がそこそこ高く偏りが無い。それに今の彼らの練度なら、三条大橋で苦戦することは無いはずだ。
あまりにも早い第三部隊の帰還に首を捻りながら、小夜とゲートへ足を進める。
堀川「主さん！ 主さん！」
隊長である堀川が抱きかかえていたのは、血まみれになったAだった。
「A！ Aを手入れ部屋に！ 小夜は薬研を呼んで来てくれ！」
小夜はこくりと頷き持ち前の機動力で薬研を呼びに行く。その間にAを手入れ部屋に敷かれている布団に寝かせる。
本体に手をかざす。しかし、黒紫色の光が触れさせまいと俺の手を弾く。
「何でだよ！？ 何で手入れが出来ないんだ！？」
何度も試みるが、やりすぎたせいで手が痺れてきた。
薬研「大将、こりゃあ何かしらの術がかかってやがる。恐らく高橋が掛けたんだろう。アイツを倒さん限り、Aにかかった術は解けねぇだろうな」
「くっそ……！」
Aが目覚めるのを待つしかないか……
堀川「主さん、今回時間遡行軍の数が少なくて、変に思っていたんです。時間遡行軍を倒した後に、木に引っかかっていた所を五虎退君が見つけてくれて。どうしてあんな所に居たのかは分からないですけど……」
「……そうか。話してくれてありがとな」
薬研「大将、これを見てくれ｣
応急処置をしてくれていた薬研が指をさした方に目をやると、Aの首筋に、いくつも残る紫色の点を見つけた。
『何だよ、これ……』
薬研「注射針の跡だ。一週間前から頻繁に打たれていると考えられる」
高橋は一体、Aに何をしたんだ……？
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作者名：まじゅっちゃん | 作成日時：2021年7月1日 17時
