情けない 晴人side ページ12
高橋とAが去って行った大広間で、俺はただ呆然としていた。
宍戸「Aちゃんは……」
息を切らして入って来た宍戸さんにそう問われ、首を横に振るのがやっとだった。
長谷部「主、俺たちが気絶している間に何があったんですか？」
そうだ。さっきまでの出来事を知っているのは俺だけだ。
重苦しく口を開き、これまでを説明した。
それを聞いた彼らの瞳は殺意に満ちていた。
再び視線を下に下げる。
あの時無理やりにでもAの手を引いていれば。俺も霊力で少しでも対抗していたら。もっと早く森崎さんからの引き継ぎの話をしていれば。
俺の手を離した時のAの酷く辛そうな表情が蘇り、後悔が波のように押し寄せてくる。頬に出来た傷が、擦り傷程度の痛みに感じられた。
これからどうするべきか、停止している思考を少しずつ動かす。ふと目の前に陰りが出来た。次の瞬間、宍戸さんに胸ぐらを掴まれ目が合った。
「しっかりしてください。彼らがAちゃんを救いたいと言っているのに、貴方は座り込んでいる場合ですか。此処の本丸の長は貴方です。貴方が指揮を執らなくてどうするんですか。それに、Aちゃんを救える審神者は、貴方しか居ないんですよ」
その鋭い眼差しと言葉に目と耳が離せなかった。
情けないな、俺は。年下に説教されるなんて。
「……そうですよね。俺がしっかりしなきゃですよね」
スッと立ち上がり、両頬をバチンと叩く。
「Aの救出、手伝ってくれますか？」
俺の問いに、宍戸さんは当然とでも言うかの如くニッと口角を上げた。
宍戸「はい。勿論です。私は情報と現状を調べます」
絶対にAを救ってみせる。
高橋への殺意が、俺を奮い立たせた。
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作者名：まじゅっちゃん | 作成日時：2021年7月1日 17時
