遅かった 宍戸side ページ11
「晴人さん！」
大広間を見て唖然とした。
食器はひっくり返り、畳には何かが叩きつけられたような黒い跡が。刀剣男士たちは涙を流したり青ざめたりしていた。
「Aちゃんは……」
そう問うと、晴人さんは弱々しく首を横に振った。
嫌な予感は的中していた。やはり遅かった。
長谷部「主、俺たちが気絶している間に何があったんですか？」
長谷部さんの問いに晴人さんがこれまでを説明をしてくれた。
その話を聞いて脳内の何かがちぎれた。
政府の上の人間の息子だろうと、もう容赦は出来ない。これ以上好き勝手にさせてたまるか。
三日月「あの人の子め……どう始末してくれようか」
彼の瞳の中の三日月が、赤く燃え上がったような気がして息を呑む。
ラスボスと呼ばれる三日月さんでさえも高橋の呪力には敵わなかったようだ。強く膨れ上がる呪力を持つ高橋に近付くのは、現段階では危険と判断した方が良いだろう。
清光「俺、Aにちゃんと謝りたい。その男のせいとはいえ、沢山酷いこと言っちゃったから……」
加州さんの言葉に、他の男士たちも頷く。
その様子を見て、Aちゃんが彼らにどれ程愛されているかがよく解る。
「そうですね。皆さんが今出来ることはまず、鍛錬に打ち込むことですから」
晴人さんに視線を移すと、目を伏せて口を噤んでいた。
意気消沈したその姿に嫌気が差し、胸ぐらを掴み目を合わせる。
「しっかりしてください。彼らがAちゃんを救いたいと言っているのに、貴方は座り込んでいる場合ですか。此処の本丸の長は貴方です。貴方が指揮を執らなくてどうするんですか。それに、Aちゃんを救える審神者は、貴方しか居ないんですよ」
杏果がどんな思いで貴方にAちゃんを託したか。貴方なら既に理解しているはずでしょう。
晴人「……そうですよね。俺がしっかりしなきゃですよね」
決意を固めたようで立ち上がると、両頬をバチンと叩いた。
晴人「Aの救出、手伝ってくれますか？」
「はい。勿論です。私は情報と現状を調べます」
しかし救出するとはいえ、政府内に私の味方は居ない為、迂闊に行動出来ない。それに私の把握しきれていない高橋の手下も何人か居るはずだ。慎重に行動しなければ……
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作者名：まじゅっちゃん | 作成日時：2021年7月1日 17時
