怪物、少しずつの想い ページ16
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「あっ、ちょっと待っていいね、シュントくんそのまま!」
「「………ふふっ」」
一方 大きな桜紅葉の木の下で、舜斗はAの髪についた赤い枯葉を取ろうと手を伸ばしていた。すかさず声を上げたカメラマンに 2人は目を見合わせて笑う。
「日高さん達全然来ねえな」
「……ねえほら、手ぇ振ってないで来たらええやんな」
「まあいいんじゃない?もう少し俺らだけでも」
2人の声がちょうど届かなそうな距離から、こちらの視線に気がつき手を振る日高と直哉。Aはニコッとそれに袖を揺らした。
日高の“No.1晴れ男”の異名は伊達じゃなく、雲一つない冬晴れの日差しの下で澄んだ空気が首元を撫でる。
珍しく舜斗が自分の仕上がりを「綺麗じゃん」と褒めたことに機嫌をよくして、Aのとてもいい表情が次々とカメラに収まっていた。
「……、」
ふと足元を気にして節目がちになった舜斗の横顔をジッと見つめるA。袴姿のせいか、それとも数日前にまた暗く色を入れ直した髪のおかげか、落ち着いた色気が彼から漂っているのを感じて 急に目が逸らせなくなったのだ。
「ん?」
視線を感じ、クイっと眉毛を上げてみせる。
そんな幼馴染の仕草にAはわずかに唇を舐めて、蛇腹傘を持つ手に力を入れた。
「その髪の毛いいね」
「……あー……セットが?色?」
「へへっ、両方〜」
「前髪ない方がいいんだ」
「あるのも好きだよ」
「どっちかといえば?」
「んー、んー……ほんまにどっちも好き。目は見えてて欲しいかな……」
“舜斗が私のことを見る目が好きだから”
言葉にしないよう、裾から伸びる指先を口元に当てた。
タイミングよく切られたシャッターの音に「目、なぁ…?」と、変なこと言うやつだと言わんばかりの舜斗の反応は紛れていく。
カメラマンに撮られつつ歩いてたどり着いた池のほとり、水面を覗き込むと 黒い鯉のような魚の影がすぐそこで何匹も動いていた。
「(わぁ、)」
「寒くない?」
「うんっ、ねっ、ほら鯉だよ!ナオくん!ねー見て、鯉沢山おる」
サブカメラに撮られていた直哉に声をかけて、手招きで呼び寄せる。明るく響く彼女の声に吸い寄せられたのは日高もで、仕舞いには並んで覗き込む4人の顔が水面に反射していることにAは気が付いた。
「おっ、格好いい人3人もおる」
「ははっ!格好いい人3人と、美しい人1人かな?」
「ナオも美しい人が良いですぅ」
「(…はしゃいで落ちるなよ)」
コソコソとたわいも無い話を続ける4人。
ギュッとなって池の淵にしゃがみ込む彼らの後ろ姿を、レンズはそっととらえていた。
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くぼりや最推し(プロフ) - リルアワ10!楽しみにしてます!! (4月17日 22時) (レス) id: 90a2e6930a (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - kikiさん» こんにちは〜!ソウタは色んなことがすーぐお顔に出てしまうのに、きっと特別なメンズBESTYにいち早く気付いて、ちょっと間我慢してたけど耐えらんなくなったんだろうなぁと思います(笑) (4月7日 22時) (レス) id: 45623bbec3 (このIDを非表示/違反報告)
kiki(プロフ) - お久しぶりです!最新話のソウタの顔があまりにも簡単に想像できてしまって思わずコメント欄に来てました…🤦🏻♀️ (4月2日 22時) (レス) @page46 id: e7b97053e4 (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - くぼりや最推しさん» クレヨンの握り方もどうせ子供っぽいモンちゃんです。お絵描きのときはやたらと幼女の雰囲気。いえいえこちらこそありがとうございます。 (4月2日 21時) (レス) id: 45623bbec3 (このIDを非表示/違反報告)
くぼりや最推し(プロフ) - はううかわいい、、グッズ考えてるときの子供のようなモンちゃん大優勝でした。カプ大渋滞ウェルカムです!!!いつもコメントまで丁寧にお返事していただきありがとうございますー!!! (3月31日 11時) (レス) id: 62f89a7c15 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白 | 作成日時:2023年12月26日 18時