リルティングアワー9【BE:FIRST】

怪物、人生に一度なので ページ15

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日高はAの大きな個人仕事が終わるたびに『ご褒美は何がいいか』と、彼女のおねだりを聞くようにしている。事務所の他の所属にはやらない単純で明確なご贔屓だ。


聞かれると決まり文句のように美味しいご飯が食べたいというA。
主演ドラマがクランクアップした後最初のミーティングでもまた、そのような返事が来るだろうと予想していた日高は、彼女の思わぬ言葉に手元を止めた。




「………(前撮り、)」

「、成人式前に日高さんと撮りたいです。……今からじゃ難しいです……？」



「…………いーや、やろう。絶対撮ろう。全力でスケジュールあけるね！！！！」




改めて愛おしさが倍増するほど嬉しい申し出に、今四半期の最重要案件だよ！と熱高く語る日高だが、(最重要案件はBMSGFESであれよ……)とその傍で秘書は心の中で突っ込んだ。

だが 日高の反応を見て嬉しそうに頬に手を当ててニヤけるAを見ると、(社長はこれから我々に無茶苦茶なこと言うだろうが全て許そう)という気持ちになってしまう。

なんだったら前撮り用の振袖は、彼女の祖母が用意した式用のものと別でいくつか用意したらいかがでしょうと 進言しようとすら考える。自分でなくても他のスタッフが言い出すだろう。Aならなんでもよく似合うので様々な姿を収めておきたい。


ちなみに彼女の成人式については確実に参加が出来るよう、社をあげて昨年末からスケジュール調整をして来た。本人の希望で舜斗と共に名古屋で参加予定である。




「せっかくならお祖母様もお呼びできたらいいね、体調が優れればだけど」




それか大阪に行ってしまおうか、なんて、どこまで本当に出来るか分からない日高の提案にAは胸を躍らせた。








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11月下旬

早朝の都内某所。
風情溢れる赤と黄色の紅葉の中に、振袖を着る女の子と 袴姿の男の子がいる。

紅白の蛇腹傘を差してお互いを見ながらなにやら談笑している光景をカメラの後ろから見て、直哉は思ったことを忌憚なくつぶやいた。




「こう見るとウエディングフォトですねぇ」

「ははっ、確かに！」

「……社長まさかそれ狙ってますぅ？」




探るような質問に、含み笑いで誤魔化した日高もまた袴姿。
A・舜斗と共に成人式を迎える直哉ももちろん袴姿で、カッチリとヘアセットを決めていた。




「(2人とも大きくなったなぁ……)」




出会ってまだ3年ほどの自分がこんなことを思ってしまうのは変だろうか。紅葉に顔を綻ばせ無邪気にポーズをとる2人を視線の先に、日高は急速に移ろいゆく彼らを見守る日々を そっと思い出していた。






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