怪物、招待客と招き猫 ページ36
.
普段撮影現場にはほとんど手ぶらで来る彼女が 肩からトートバッグをぶら下げていて、そういえば今日は大学から直接現場にきたのかなとまで考えてハタと気が付く。
ああそういや年始にも見た姿だ、台本か何かを持っているのだなこれは。
家の鍵を扉に差し込むAの後ろ姿にそんな事をボーッと頭の中に巡らせていた。
扉が開いた途端何より先に耳に入ってきた、何かが板を軽く引っ掻く音。それに反応したAが「ただいまぁ〜」と柔らかいソプラノを出す。
普段の話し声がどちらかというとアルト寄りだから、あまり見ないそのテンションにも驚いた。し、(可愛すぎる嫁に来て)とIQが著しく下がったのは言うまでもない。そんな顔は一切見せない男だが。
「お邪魔しまーす」
「どうぞー。」
客人の目下に当たり前の顔して鎮座するエイリアンスリッパ。これを考えた舜斗の監視の目が光っている気がして、若干目を逸らしたくなった。
というか、引っ越したてのAの家にこれが来客用としてあるのはシュールやなぁと思いながら足先を差し込む。
「むぎちゃんただいまぁ、いい子にしてたん？」
リビングの戸が開いた瞬間に飛び付いてきたのは、最近彼女が飼い始めた薄茶の猫。器用にその小さな体を抱き留めて腕に抱え、後ろについて来た男を振り返る。
「ほら、マナちゃんやで」
「マナちゃんですよ〜」
Aの事を言えないほど語尾が上がってしまうのは仕方ないというか。女神×天使はもう極楽やろ。と日高あたりが言いそうなことを頭の中で呟き、猫の顔を覗き込む。しかし愛嬌に惹きつけられて安易に触れたりはしない。
「もう1匹は？」
「もちは警戒心強いからおやつやらんと出てこんと思う」
Aの腕の中にいるコムギが“にゃ〜”と鳴く。
まるで“おやつ”という言葉に反応したように見えて、真人は思わず笑ってしまった。
一言断りを入れて両手に持っていた買い物袋をキッチンに置くと、「生ものはすぐ冷蔵庫入れんとこの子達漁るねん」とシンクで手を洗うAは言う。
「刺身やべーな」
「ほら、鼻くんくんしてる」
「ははっ」
Aの腕から飛び降りたコムギが、真人の足元で鼻を膨らましながらうろついている。ふわふわの毛並みが脛の辺りを撫で付ける くすぐったさに声が出た。
.
怪物、招待客はコックさん→←D.U.N.K. showcase��
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 390人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
くぼりや最推し(プロフ) - ヤキモチやいちゃうモンちゃんかわいすぎて一生ニヨニヨ(ニコニコ➕ニヤニヤ))してますわ〜 (4月29日 17時) (
レス) id: 90a2e6930a (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - ミリアさん» マジでこちらもいつか絶対書きたかった構図なので、ここか？ここでいいのか…？と思いつつ間違いなく人生の特別な日に放ったわけです！喜んでいただけてよかった！幸幸💫 (12月26日 19時) (レス) id: 8ca703a50c (このIDを非表示/違反報告)
ミリア(プロフ) - ちょっとごめんなさい、えーっと、これは夢ですか？ﾊﾞﾁｲｹスーツ姿の男7人とドレスのモンちゃんの構図、ずっとずっと私が個人的に夢に見ていたものでした。ですので思わぬ最高のクリスマスプレゼントにモンちゃん同様言葉を失っております。感涙。白さんに幸あれ... (12月25日 19時) (レス) @page50 id: e9170fcfd6 (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - masayo_8さん» 何かと重ねて読んでくださる方がいると思うと、大事大事にしないと…と思いますね。私も作り手ではありますが、幸せになれーと思いながら色々妄想してますよ笑 (12月25日 0時) (レス) id: 8ca703a50c (このIDを非表示/違反報告)
masayo_8(プロフ) - モンちゃんのお誕生日は、つい先日亡くなったワンコのお誕生日と近くて、なんだか他人とは思えなくなります😢お話の中の存在かもしれないけど、幸せであれ！！と願うばかりです💕 (12月23日 20時) (レス) @page49 id: be11c96dd8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：白 | 作成日時：2023年10月2日 15時
