ヒーロー、怪物を抱え込む ページ18
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土曜日
壮大と礼王のバイクの後ろにそれぞれAと樹音が乗って、家から約1時間半かけて奥多摩湖にやってきた。
もうすっかり聴き慣れたAの星空解説に、壮大は(あれがカシオペア座、ペガサス座、みずがめ座)と頭の中で星をなぞりながら呟いている。
Aと出会うまで何の意味も持たなかった星の海は、今では彼の中で果てしなく奥が深い無限のキャンパスになっていた。
「8月の流星群より弱いから今日は見えんかも、」
「まあ充分綺麗だしいいんじゃん?」
Aのすぐ隣をちゃっかり陣取ってそう返したのは樹音。彼をケツに乗っけてきた礼王は、行きがけに「安全運転でよろしく」「そっちのメットの方がいい」「俺30分以上振動に耐えられない」等と散々言われてウンザリしていた。
(断りゃいいのにAがいるからって…!)
車の運転ならまだしも、樹音はそもそもバイクの後ろに乗るのが苦手らしい。以前にも自分の二輪に乗せることを断られていた礼王は、人知れずそんなことを思っていた。口に出したらすごく睨まれるので絶対に言わないけれども。
無自覚ほど罪なことも無いんだぞ…!
「乗り出すと落ちるぞー」
「怖いこと言わんで」
「、うりゃ」
「ッッッ!ねぇ!ほんまにいやっ!」
小河内ダムを見下ろす柵に手をかけるAの後ろから壮大がちょっかいを出すと、本気で嫌がった彼女が一歩自分の方に下がってきて腕を掴む。
背中がすっぽりと壮大の胸元に収まり、彼は「ははっ」と軽く笑いながら反射的にAの身体に腕を回した。
「いやっ」
「わかったわかった、すまん」
ポンポン頭を撫でて落ち着かせる。
高所恐怖症のくせに怖いもの見たさなのか、星に気を取られてこの高さを忘れていたのか。普段ならふざけた自分をもっと怒りそうなものを、脚がすくんだように体を預けてくるA。
「……………………そーたくんのばか」
「言うじゃねーか」
「………………………………みづのことも誘えよばーか」
「ん?(笑)」
「っ、聞こえてんだろっ」
「口悪ぃーな」
ったく、と呆れ交じりにため息を吐く。
Aから不意に出る口の悪さは誰譲りなのか。普段外面が良い分、それだけ自分達に心を許していると分かっていてもドキッとする。しかし、
“みづのことも誘え”
数日前のやり取りでは口にしなかった彼女のモヤモヤを、今になって素直に伝えてくる。
流石モテ女、やり方がズルいなと思う。どんだけ嫉妬されて気遣うのが面倒でも、こりゃ可愛いと言わざるを得ない。
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くぼりや最推し(プロフ) - ヤキモチやいちゃうモンちゃんかわいすぎて一生ニヨニヨ(ニコニコ➕ニヤニヤ))してますわ〜 (4月29日 17時) (レス) id: 90a2e6930a (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - ミリアさん» マジでこちらもいつか絶対書きたかった構図なので、ここか?ここでいいのか…?と思いつつ間違いなく人生の特別な日に放ったわけです!喜んでいただけてよかった!幸幸💫 (12月26日 19時) (レス) id: 8ca703a50c (このIDを非表示/違反報告)
ミリア(プロフ) - ちょっとごめんなさい、えーっと、これは夢ですか?バチイケスーツ姿の男7人とドレスのモンちゃんの構図、ずっとずっと私が個人的に夢に見ていたものでした。ですので思わぬ最高のクリスマスプレゼントにモンちゃん同様言葉を失っております。感涙。白さんに幸あれ... (12月25日 19時) (レス) @page50 id: e9170fcfd6 (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - masayo_8さん» 何かと重ねて読んでくださる方がいると思うと、大事大事にしないと…と思いますね。私も作り手ではありますが、幸せになれーと思いながら色々妄想してますよ笑 (12月25日 0時) (レス) id: 8ca703a50c (このIDを非表示/違反報告)
masayo_8(プロフ) - モンちゃんのお誕生日は、つい先日亡くなったワンコのお誕生日と近くて、なんだか他人とは思えなくなります😢お話の中の存在かもしれないけど、幸せであれ!!と願うばかりです💕 (12月23日 20時) (レス) @page49 id: be11c96dd8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白 | 作成日時:2023年10月2日 15時