リルティングアワー8【BE:FIRST】

ﾋｰﾛｰ、は気付かない ページ15

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「また……？」




ある日のリハーサル終わり、礼王と会話していたAは思わず寂しげな声を漏らした。その様子を目の前で見た礼王は思わず胸元を手で押さえる。比喩表現ではなく、胸がギュとしたのだ。

会話の内容は今日の夜ご飯のこと。
多忙で中々メンバーと食事を取ることが出来なくなってきたAが、久しぶりに確保した時間で舜斗や礼王を誘った。そうなれば礼王は自然と壮大と真人にも声をかけたのだが、2人から返ってきた返事は「先約がある」との断り文句。

先約の相手は大体察しがつく。
新曲の振り付けをきっかけに最近また交流が深まってきた、ダンサー界隈の仲間達だろう。




「せ、先約は仕方ないよ。俺らで美味いもん食べよう」

「…………そーたくん最近レイナちゃんばっか」

「A、」

「……ごめん。こんな事れおにしか言わないから許して」




拗ねた目で、むりやり笑っているような顔をしている。
その表情と台詞から“あらあら嫉妬深いのね”と察する礼王。嫉妬深いというか、週に2度も3度もある予定に“お酒が飲めないから”という理由で自分(と竜平)だけ誘われないのは気が悪いんだろう。

それだというのに、同じ未成年の舜斗がMVのプチ打ち上げに途中合流した事を知ったら怒り狂いそうだな。……いや舜斗のことであればAは既に知ってるか。等と頭の中でグルグル考えて、(これは繊細な問題なので言動には慎重になろう！)と決意する。


ここまでの考えは全て表情に出ている礼王なので、
真ん前からジッと見ていたAには全てお察しだった。

こんな時になんだが、最近Aはもっぱら礼王のことは呼び捨てである。




「……なに食べる……？」

「そういえばシュントが行きたい焼き肉あるって言ってなかったっけ、そこ行こうよ」

「うん！りょーきくんとのんちゃん来るかな」

「リョウキは来るよ。一旦家帰るらしいけど」

「私も荷物置いてくる」

「じゃあ俺も一緒に帰ろっかな」

「ねえところでのんちゃんは今日なんかあるのかな」

「………えっと、」

「、……ふーん。のんちゃんも行くんだ……」




わずかに低くなった声に一瞬『はわわっ』となる礼王。しかしそんな様子をよそに、Aはすぐに気を取り直して「舜斗ー！おうち帰るけどどうするー？…………ほな着いたら店情報送ってー」と、スタジオを横断する大きな声で相方と会話をしていた。




(大丈夫かな、？)




などという礼王の心配はどこ吹く風か、その後のAは壮大たちに断られたことをすっかり忘れたのか、極上の和牛焼肉にはしゃぎ倒していた。




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