怪物、猫の細道を行く ページ7
.
赤い木の柵に手をかけて、目下の海町を見下ろしながら「晴れて良かった」と笑うA。
その少し後ろに立つ舜斗と、同じように柵に手をかける真人、竜平。礼王がスマホを横にして彼らを丸ごと画角に収めた写真を何枚か撮っている。
「Jとそーちんも来ればよかったのに」
冗談めいた声でそう言ったのは竜平。言葉のニュアンスに“バカだなぁ”という意味が込められていそうなのは、未成年の余裕だろうか。それか、2人が来れなくて寂しいという気持ちの裏返しか。
「二日酔いはどうしようもない」
「4時くらいまで部屋で飲んでたんだよー、多分まだ寝てる」
「チェックアウトの時間過ぎてますけど(笑)」
成人組は昨夜の打ち上げの後、どうやらホテルの一室に集まって2次会を始めたらしい。翌日の仕事のため東京に帰った凌輝以外 参加したメンバーはそこそこに酔ったのだが、日付が回る前に帰った真人・礼王と、朝方まで長酒した壮大・樹音で明暗は分かれたようだ。
「そんだけ飲んで記憶あるもんなん？」
「あやしいねぇ。ソウタくんは結構記憶飛ばす派」
「覚えてないのに朝まで飲むなんて、変なの」
「ふっ……ソウタくんに言ってやって」
みんなで来たかったなぁ……と素直に呟くAの髪をほとんど無意識に撫でる真人。きっと壮大は、翌日にA考案の観光があると知っていれば 何時まで飲んでようが意地でも起きただろう。
“もっと早く言えよ！”と今晩悔しがる彼の様子は見ものだ。
「みづ、猫見に行くんだろ」
「あ、うん！」
「ねえ僕ほうじ茶フロート食べたい」
「食べよ食べよ！下山したら食べ歩きっ」
飛び跳ねるように舜斗の隣まで来て、「いこっ！」と下山ルートの道を指す。行きはロープウェイで登って来たが、帰りは通常『猫の細道』と呼ばれる路地を下っていく。
「あーっ♡いた！しゅんと、真っ黒いのおる！」
「おー、…………おいほら。足元危ないから走るな、」
「走らん走らん。」
小さな石畳の階段を降りていくと、塀の上にちょこんと座る黒猫が一行を出迎えた。足元を一切見ずに階段を駆け降りるAに、いつ転ぶかと舜斗はヒヤヒヤしている。
“にゃー”
「はぁぁー♡ にゃーっ、こんにちはー」
(え、ちょっ)
(嘘みたいに可愛いッ！)
(動画動画！)
蕩けた顔で塀に手をついて猫を見上げるAの破壊力ときたら。
Aと舜斗に数歩遅れてやってきた真人・竜平・礼王は揃いも揃って言葉を失ってしまったのであった。
(……レオくん後でその動画ちょうだい)
(僕にもお願いします)
(まかせろ！)
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 290人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
くぼりや最推し(プロフ) - しんどい日にシュントにくっつき虫になるモンちゃんさいっっきょうに可愛いなぁ、、 (2月4日 21時) (
レス) @page26 id: 52130a7682 (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - 塩さん» はじめまして。コメントありがとうございます！ついにモンちゃん２０歳を迎えてしまいましたなぁ…もしもし亀よの亀さんがのそのそ近付いてくる音が聞こえております😳笑 こちらこそ過去作にまで遡って読んでいただきありがとうございます！ (1月17日 23時) (レス) id: 8e0e8905f4 (このIDを非表示/違反報告)
塩 - 初めてコメントさせていただきます✨ モンちゃんが成人を迎えたタイミングで、「ジュノモンはモンちゃんがお酒飲めるようになってからが本領発揮」という言葉を思い出しこの話に戻ってきました…笑 とっても楽しみです！いつも更新ありがとうございます💖 (1月17日 20時) (レス) @page40 id: 99215fcdd5 (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - masayo_8さん» もちろんこの後明かす予定ですよ〜！お楽しみにーっ！ (6月21日 19時) (レス) @page50 id: d5b75dcb66 (このIDを非表示/違反報告)
masayo_8(プロフ) - モンバの大阪城ホール２日目が、誰だったのか気になる〜！参戦したので😁超個人的で、すみません😅 (6月20日 22時) (レス) @page46 id: be11c96dd8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：白 | 作成日時：2023年3月27日 22時
