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ab「……俺さ、実は、教師になることが夢だったんだよね。」
ru「そうなの…?」
ab「父親が学者だったからか、勉強は小さい頃から好きでさ。そういう関係の仕事したいなーって。でも丁度学校の高等部に入った頃に、この眼になっちゃって。」
ru「………」
ab「ま、科学はダメなのは変わらないから、どうせ教師になれたとしてもコソコソ勉強して今とあまり変わらなかっただろうけどね。」
ラウールは、向井や渡辺と話した時のように、また自身の胸が痛くなるのを感じた。
教師になるという夢。
そんな立派な阿部の夢は、あの深緑の眼のせいで絶たれてしまったのだ。
この眼は平和をもたらすと予言にはある。
でも実際は?
俺たちには不幸しかもたらしていないじゃないか。
無理矢理隔離し、自由を奪い、“救世主”としての振る舞いを求められる。
一見何もかもが与えられ幸せに見えるこの待遇だって、別の面で見れば人間未満の都合の良い扱いだ。
___この人たちは、全てを分かった上でここにいるのだろうか。
あぁ、ダメだ。やはり余計なことばかり考えてしまう。
気づいてもどうせ気づかないふりをしなければならないのに。
ru「……阿部ちゃん教えるの上手いから、ピッタリだね、教師。」
ab「……え?」
今度こそ余計な考えを捨て素直な気持ちをラウールが言えば、阿部は拍子抜けしたような顔をした。
それが少し面白くて、ラウールは言葉を続ける。
ru「こんな優秀な先生独り占めできるとか、俺めっちゃラッキーじゃないっ?」
“多分俺、この国で一番優秀になれるよ。……いや、阿部ちゃんの次だから2番目か…?”
そんなことを独り言のようにラウールが呟けば、ふははっと阿部が笑い出す。
ab「そうだね…剣のセンスもあって勉強も出来るとか、ラウール最強になれるよ。」
ru「え、剣?」
ab「うん、佐久間から聞いたよ。ラウールめっちゃヤバい!!!強い!!!って。」
佐久間が裏でも自分のことを褒めてくれたと聞いて、思わず口角が上がる。
ちらりと時計を見れば夕食の時間が近づいてきていたことに気づき、ラウールは一度自室に戻る準備を始めた。
ru「あ、ねぇ、この本借りてもいい?自習したい!」
ab「勿論。」
本を片手で抱えドアノブに手をかけたラウールは、無邪気な、だが少し悪戯っ子の様な笑みを浮かべながら阿部に振り返った。
ru「これからも勉強教えてね、“阿部ちゃん先生”!」
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ゆ(プロフ) - れいあさん» お話書いていただきありがとうございます!更新楽しみにしています! (2020年12月19日 15時) (レス) id: a7e52b77bc (このIDを非表示/違反報告)
れいあ(プロフ) - ゆさん» 大変長らくお待たせしてしまい本当に申し訳ないです。めめラウのお話書かせていただきました…!全4話構成となります。ご期待に添えていれば幸いでございます。是非この作品をこれからもよろしくお願い致します……! (2020年12月19日 13時) (レス) id: dccccf6903 (このIDを非表示/違反報告)
れいあ(プロフ) - 晦由さん» いいえ!前からお話の構成は出来ていたのですが、お話の順番の関係で中々公開できず………。本当に申し訳ないです。更新頑張ります!リクエストありがとうございました!!! (2020年12月18日 23時) (レス) id: dccccf6903 (このIDを非表示/違反報告)
晦由(プロフ) - れいあさん» ありがとうございます!正直、忘れられているかと思ってました(笑)2話読ませていただきましたが、続きが楽しみです^^更新頑張ってください! (2020年12月17日 23時) (レス) id: c44f20117a (このIDを非表示/違反報告)
れいあ(プロフ) - 晦由さん» 大変お待たせ致しました、あべさくのお話続編の方で書かせていただきました!全3話構成の予定です。ご期待に添えていれば幸いです。是非この作品をこれからもよろしくお願いいたします…! (2020年12月17日 23時) (レス) id: dccccf6903 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:れいあ | 作成日時:2020年11月21日 19時