Genesis.

名前に似つかわしい存在 ページ11

ru「んんー……」




差し込む日の光と鳥の囀りで、ラウールは目を覚ました。

久しぶりに、こんなに熟睡した。

夜中に起きるのはおろか、夢すら見なかった。

昨日の疲れが相当だったのか、このベッド質がとんでもなく良いのか。




ru「…どっちもか。」




ベッドから起き上がり、窓を開けに行く。




ru「外に出れるんだ…」




所謂バルコニーだが、ラウールの家には無かったため、初めてみるものであった。

ドアの付近にあった靴を持って、そっと窓の外に置いて履く。




ru「気持ちー…」




冷たすぎない、爽やかな風がラウールを包む。

町が一望できる景色に、思わず柵のギリギリまで近寄り、寄りかかって見る。

地平線の奥の方まで、家やら店やらが建っている。

ラウールの家は、そのもっと先。




ru「母さん、どうしてるかな…」




昨日の母親の泣き顔がラウールの脳裏に浮かぶ。

そういえば、昨日兵士達に俺が連れて行かれてしまったのは何故なのだろうか。

俺があの時会ったのは母だけ。

情報が漏れたとしたら、母からしかあり得ない。

けど、あの顔を見てしまったら、俺を売った様には思えない。

でも………。




そんな考えがラウールの頭の中をぐるぐる回る。




ru「はぁーあ…」




「らっうーるーーー！」




ru「うわぁっ！？」




急に背後から聞こえた良く通る声に驚いて、思わずラウールは振り返る。

するとそこには眩しいくらいの笑顔の佐久間が。




ru「佐久間…さん…」


sk「さん付けなんてやめてよ！敬語ダメって言ったでしょー！」




手を大きくクロスさせて、佐久間はそう言った。

なんだか、17歳のラウールより子どもらしいそんな言動にラウールは思わずふふっと笑った。

それを見て、佐久間もニヒヒと桃色の眼を細めて笑う。




sk「ごめんね、ご飯の時間だから呼びに来たんだけど、ノックしても返事がなかったからさ！」


ru「あぁ…ごめん、ずっとここに居たから」


sk「そうなんだぁ〜…バルコニー寒くない？」


ru「バルコニー？」


sk「え？あ、ここのこと。…そっか、門の外にいたんだっけ？こういうの無かった？」


ru「はい。ベッドだってあんな良いものなんてないし…あの箱も無かった。水はいつも汲んでたよ。」


sk「あー…箱って冷蔵庫？あれも相当古いバージョンだけど…門の外ってそんな酷いんだ…」




…冷蔵庫。

確か深澤にも昨日言われたな、なんてラウールは思った。

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