リボンを解いて ページ9
○JAEHYUN
『あ、間違えました………』
どうしようもなくハンバーガーが食べたい。そういう日ってあると思う。だからこっそり買いに行って、誰もいなさそうな練習室を探して、きっと自分の顔はにっこり笑っていたに違いない。
ドアを開けてソファーがある方向に向いた瞬間に、そこに座っていた女の子と目が合って3秒、それが知り合いだと分かるのに5秒、紙袋を落としかけて意識が戻るまでは10秒かかった。
『A？』
「記憶って消せたりします？」
『…は？』
「いや、その、今これって、かなりまずい状況で」
『とりあえず食べて良い？』
「あ、どうぞ…どうぞ？」
久しぶりに見た顔は、思っていたよりも元気だった。机に散らばっていた荷物を持って、ここ使ってくださいと言われて出て行こうとするから、慌てて腕を掴む。
『どこ行くの？』
「帰りますよ」
『なんで？』
「なんで…？」
『一緒に食べよう、分けてあげる』
「いや、でも」
『ジャニヒョン呼ばないと嫌だ？』
ぴたりと動きが止まる。最近テヨンイヒョンがそわそわしているのにも、ジャニヒョンが1人でどこかに出かけて行くのにも、気付いてた。ちょっと力を入れたら素直に戻ってきて、隣に座る。手を離しても大丈夫かな。
「…誰にも言わないでくださいね」
『どうして？皆に会わないの？』
「まだ会ったらダメなんだって」
『ジャニヒョンたちは良くて俺はダメなの？』
「それは先生に聞いてくださいよ」
『マークたちにもまだ会ってないの？』
「うん、早く会いたいけど」
本当に食べて良いの？と聞くから、袋からポテトを出す。どうせ誰かに見つかると思ったから、あらかじめ2つ買っていた自分をちょっとだけ褒めてみる。まさかAと食べるなんて思ってなかったけど。
『今までどこにいたの？』
「仁川の実家です」
『地元そっちなんだっけ？』
「うん、両親が空港にいるから」
『ああ、そうだった』
「だからわたしもって考えたりもしたんですけど」
「みんなにバレちゃうんじゃない？』
「誰も覚えてないかもしれないですよ」
『俺が覚えてたじゃん』
「それはずっと一緒だったから」
『まあね』
「もう皆、わたしに興味ないかも」
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作者名：yom | 作成日時：2022年12月5日 18時
