lilac (ページ7)

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ストロベリーキャンディページ7

○CHENLE

僕はこの会社に入るらしい。さっきから受けている説明はどこかで役に立つのかもしれないけど、とりあえず今は頭がパンクしそう。ちょっと待っててねと言われた気がしていたけど、そう言われてから15分は経っているし、何なら喉も乾いて来た。

『あの、』

「はい？」

『水、どこかにありますか？』

「自販機ならすぐそこにありますよ」

『あ、本当だ』

「練習生になるんですか？」

『そうです、多分』

「多分？」

『まだ何も、よく分からなくて』

はじめてちゃんとその人の顔を見て、どこかで見たことあるとは思ったけど、今はそんなことを考えている余裕なんて無い。というかこの人、僕に合わせてゆっくり話してくれている、気がする。そう思っていれば目が合って、にっこりと笑った顔がこっちを向いていた。

「合ってるかな、きっとそうだよね？」

『え？』

「この方が話しやすいよね？」

『…え、中国語話せるの？』

「ちょっと昔、頑張ってたから」

パクAですと笑って、その時にできる笑窪が可愛いと思った。歳はひとつしか変わらなくて、ここに来てはじめてやっと安心出来た気がする。あげると言われたキャンディは甘くて、そうしている間にさっきのスタッフさんが戻って来た。

「あれリラ、チョンロといたの？」

『…リラ？』

「うん、じゃあまたね」

『あ、えっと、ありがとう』

「ううん、頑張ろうね」

チソンっていう子がいるから、きっとすぐに仲良くなれるよ。そう言ったAヌナの通り、というか知り合いだったから人見知りされずに済んだみたい。あれからAヌナのことは見てないけど、練習の合間の休憩中、ふと頭に浮かんだのはAヌナだった。

『ジェノヒョン、』

「うん？」

『Aヌナってどこにいるの？』

「…A？」

『うん、リラって言った方がいい？ていうかどっちが本当の名前？』

「Aが本名で、リラが活動する時の名前だよ」

『ああ、だからあの時リラって呼ばれてたんだ』

「チョンロ、Aにいつ会ったの？」

『ここに来てすぐ、会社の中で』