lilac (ページ22)

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○

『おはよう』

「おはよう、よく寝れた？」

『うん、このソファー良いね』

「あまりにも気持ちよさそうだから、起こさないでいたの」

クッションが沈んで、ジェミンの肩がわたしにくっつく。持っていたパンはふたつに分けられて、ぺたぺたと足音が聞こえた。

「あれ、ヌナ？」

『チソンア、おいで』

「どうしてここにいるの？」

『今日はここで寝たからだよ』

「ここで？体痛くない？」

『大丈夫、ありがとう』

柔らかい髪に触れる。時計を見れば朝の7時で、ぐっと体を伸ばせばジェミンがシャツの裾を引っ張った。口角を上げて立ちあがろうとすればその拍子にくらりと揺れて、世界がぐるりと回転する。

『…びっくりした』

「ヌナ、本当にちゃんと寝ましたか？」

『寝たはずなんだけど…ごめんジェミナ、重いよね』

「Aは雲より軽いから大丈夫」

ぎゅっと音がつきそうなほどに、抱きしめられているのに気付くのは、ジェミンの好きな匂いがしたから。

溶かされている。これって愛情なんだろうか。それよりももっと、複雑な気がする。

『よし、携帯探そうかな』

「また無くしちゃったの？」

「僕も手伝います」

『大丈夫だよ、多分枕の下にある』

起こさないようにドアを開けたのに、ベッドに座るロンジュンと目が合った。もう平気？と言われて、大丈夫と答えた。道路を走って自分の部屋に着いた時、着信音が聞こえた。

『ヘチャナ？』

「……やっと出た」

『ごめん、今見つけた』

「良いタイミングだった？」

『うん、流石だね』

「何年Aの友達やってると思ってるの」

もうすぐそっち向かうから準備しておけだって。そう言って電話は切られて、鏡で自分の顔を見る。少しむくんでたけど、オンニは許してくれるかな。

目を閉じる。吸って吐く。大丈夫、息は出来ている。

〉頑張れリラ
〉終わったらアイス食べよう

窓の外を見ながら眠ったら、夢を見た。家に置いて来た制服は埃をかぶっていそうだけど、お揃いの衣装で歩いて行く。曲が流れた瞬間に前を向いて、ただ笑った。あんまり記憶が無いと言ったら、色んな人に怒られるかもしれないけれど。