ガラスの中の宇宙 ページ17
○YUTA
高く括られた髪が揺れて、振り返った先の俺を捉えて瞬きをする。パタパタと走ってくるのを受け止めようと両手を広げたら、目の前でぴたりと止まった。
『ハグしたって良かったのに』
「もうそんなに幼くないですよ」
『そう？さっき何してた？』
「チョンロたちとシャボン玉、オッパもやりたかったの？」
『ううん、俺はもう大人だし』
むっとした顔は前と変わらなくて、ご飯食べようと言えば頬が緩んでいく。頭を撫でようと思ったけど、くしゃくしゃにしたらまた顔が戻りそうだから手を繋いだ。
〈リラが戻って来た〉
どこからか漏れたその情報は、会社が公式に発信をする前に、情報の波に乗ってしまった。話題の張本人は、呑気な顔をしてもぐもぐと口を動かしている。
『ネット見た？』
「どっちだと思います？」
『その顔は全部見た顔だ』
にこりと笑って、Aのお皿にあった野菜が、知らない間に俺のお皿に全部乗せられていた。柔らかそうな葉っぱだけを戻して、少し嫌そうな顔を写真に撮る。
「…まだ良い方ですよ、どこに入るかまでは伝わってなかったし」
『ルキズの天使が帰って来たって？』
「天使とか、そんな綺麗なものじゃなかったけど」
カメラの前で笑う顔とは違う、俺たちだけに見せる顔。ジャニの後ろから出てこなくて、最初は目すら合わせてくれなかったけど、いつしかテヨンが可愛がる妹になっていた。こんにちはと初めて話しかけてくれたことを今でも覚えてるって言ったら、また微妙な顔をされそうだけど。
「聞きました？グループのこと」
『卒業のこと？』
「卒業したら、わたしはどこに行くと思う？」
『俺たちのとこ？』
「分からないけど、そのままここを離れるのかな」
時間は短い。皆が一緒にいられる時間は。ヘチャンが言うには、Aはその話を聞いて部屋を出るまで、ずっと黙っていたらしい。泣くかと思ったのに、あまりにも普通だったって。
「お兄さんとも一緒に活動してみたいな」
『出来るよ、そういうシステムなんだし』
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作者名：yom | 作成日時：2022年12月5日 18時
