lilac (ページ25)

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○

「あれ？チソンア？」

『あ、ヌナ』

「一緒に帰る？誰かいる？」

自分の宿舎に帰ろうとしたら、ちょうどエントランスでマクヒョンに会って、練習すると言うから着いてきて、窓の外はもう暗くなっている。ウィンウィニヒョンと向こうから手を振りながら歩いてくるヌナに手を振り返していたら、マクヒョンが練習室から出て来て、2人を見て嬉しそうな顔をした。

「Aとヒョン！」

「オッパ〜」

『え？』

「…それ慣れる日来る？」

「オッパ次第だよ」

「マーク、顔真っ赤だねえ」

けらけら笑っているヒョンたちと、また状況が掴めない僕。そういえばマネヒョンがこの前話していた気がするけど、マクオッパとにこりと笑うヌナが、なんだかヘチャニヒョンに似ている。

「チソンイの好きなお菓子あったよ」

『わ、ありがとうございます』

「ご飯は食べた？出前取ろうか」

ウィンウィニヒョンの携帯を見ていたヌナが、急にパッと顔を上げる。そのまま僕を見て、多分帰ってないよね？と聞いた。

『…あ、うん、待ってるって』

「だよね、チソンイのご飯わたしが用意して良い？」

「俺も食べたい」

「お兄さんたちはまた今度」

僕の手を握って、マネヒョンが待っていた車に2人で乗りながら、ヌナが誰かに電話をかけて、繋がらなかったのか画面をタップする。

「待ちくたびれて寝ちゃったかも」

『ドラマ見るって、面白そうって言ってたやつ』

「あれね、ジェノが面白いって言ってたから」

なんだか、わからないけど柔らかい。アイドルとして舞台に立っている時とは違う、本当のヌナの顔。はじめて会った時から、この人は柔らかかった。手を離して欲しくないと思うのは、子供だからと言ったら許してくれるのかな。

「部屋が暖かいのって、やっぱり良いよね」

『暖かい？』

「暗い部屋に帰るのは寂しいけど、誰かがいてくれると思ったら、頑張れる気がする」

そう言って、ソファーで寝ているヒョンの髪を撫でて、ゆっくりとヒョンの目が開く。日常と言ってしまったらその通りなのに、まるで切り取られたドラマのワンシーンみたい。

『……あ、』

「チソンア？」

「お腹空いたね、ほらジェノ起きて」

「起こして」

「…チソンのお腹と背中がくっついちゃうから！」

ぐぅ、と空気の読めない音が自分からまた聞こえて、頬に熱が集まってくる。でもヌナが楽しそうだから、なんでもいいや。