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堕ちるって多分こういうことだなと、飛貴は、久しぶりに何かを考えた気がした。
ただただ、快楽に溺れる生活も1週間を過ぎると脳がどんどん衰えていく気がする。
別にいい、全てを忘れたい。
本当に自分は、名門私立のW大附属の生徒なのだろうか。
しかも学年2位だなんて。ウソのようだ。
「飛貴、もう行かなきゃ、私」
「えー?」
「…仕事よ、ねえ、待っててくれる?」
「ううーん?それはわかんない。
…俺、寂しいの嫌いだから」
昨日転がり込んだ、随分前に関係を断ち切った女のマンションは居心地も悪くはなかった。
けれどそんなのどうだって良い。
ただ隣に、誰かがいてほしい。
「…よし」
女の姿がバス停の方へ消えると同時に、飛貴はあの日のままの学生カバンを掴み、部屋を出た。
何のためにあるのか分からない日本史のノートも、保護者会の通達も、そのまま眠っている。
たまに財布を出そうとして笑ってしまう。
あんまりな落差だ。
(そういや、那須、何してんのかな…)
自分の秘密など知れ渡ってもいいと自暴自棄になり、毒見という役目も雄登のことも忘れかけていた。
雄登からの通知しか来ない携帯電話は、どこかのホテルで捨ててしまった。
「…」
飛貴はインターネットカフェを探した。
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Webメールはこういう時に便利だ。メールアドレスとパスワードだけでネットからログインできる。
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To:浮所 飛貴
From:那須 雄登
Sub:無題
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「…あった」
メールが届いたのは一昨日のようだ。
横浜へ行ったのもとても最近なのに、遠い昔のような気がした。
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見てないと思うけどどこで何してんの?
学校もこのまま辞める気か?
俺はついに食ってないのバレたし
藤井さんにも手を出した
結局普通にはなれなかった
俺はお前がいないと壊れる
お前はそうでもなかった感じ?
那須雄登
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強気な文体に、雄登の孤独感が透けていた。
飛貴がそうであるように、彼もまた、異常なまでの寂しさに囚われて、走り出せない。
飛貴は、入ったばかりのカフェを出た。
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LIKKA(プロフ) - しぃかさん» しぃかさん…!燕の歌に引き続き嬉しいです(TT)好きと言っていただけて毎回のことながら舞い上がっています…これからもどうぞ、宜しくお願い致します(^^*) (2017年6月24日 21時) (レス) id: 101efce4a6 (このIDを非表示/違反報告)
LIKKA(プロフ) - みうさん» みうさん!嬉しいです(T_T)更新頻度ばらっばらですみませんでした…。ファンだなんて本当に光栄です。これからも宜しくお願い致します♪ (2017年6月24日 21時) (レス) id: 101efce4a6 (このIDを非表示/違反報告)
LIKKA(プロフ) - くもりさん» くもりさん!覚えています(^ ^)見習うだなんてそんなに大した文ではないです本当に…!暖かく見守ってくださり、ありがとうございました♪ (2017年6月24日 21時) (レス) id: 101efce4a6 (このIDを非表示/違反報告)
LIKKA(プロフ) - もえさん» ありがとうございます!嬉しいです(T_T)最後の展開が早すぎるという私的あるあるになってしまったのにそんなふうに言っていただけて感無量です。こちらこそありがとうございました! (2017年6月24日 21時) (レス) id: 101efce4a6 (このIDを非表示/違反報告)
しぃか(プロフ) - 完結おめでとうございます!作者さんの作品は本当に大好きで、また好きな作品が増えました!これからも、たくさんの作品読ませていただきたいです!ずっと応援しています! (2017年6月24日 20時) (レス) id: cae14c431b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:LIKKA | 作成日時:2017年5月29日 21時