検索窓
今日:8 hit、昨日:28 hit、合計:80,634 hit

Life 17 ページ8

朝、私を呼び覚ましたのはいつもの機械音ではなく甘い苦しさ。
眠ったときと同じまま、私は篤人くんの腕の中でいつもと同じ時間に目を覚ました。
いつもよりも短い睡眠時間だったけれども、とても満たされた気持ちだった。
きっとそれは身体よりも心が満たされていたからなんだろう。
いつまでもこうやって甘い檻の中にいたいけれども、そうもしていられない。
篤人くんを起こさないようにこっそりと腕の中から抜け出ると、バスルームに向かい温めのシャワーを浴びる。
何だか顔がにやけて、熱っているみたいだから。



閉じていたシャッターを上げ、窓を開けて部屋の空気を入れ替える。
早朝の冷たい空気に、身も心も洗われていくような感じが心地よい。
空を見上げれば、ドイツにしては珍しい快晴。
冷蔵庫の中身と相談しながら朝食のメニューを考える。
篤人くんはいつも朝食はパンなようだから今朝は和食にしてみよう。
いつもは億劫に感じている朝食作りも彼のためならと腕を振るいたくなるから我ながら現金なものだ。


ふと、夫はどうしているだろうかという考えが頭を掠めた。
昨晩のうちに、帰宅しない妻に気が付いたのだろうか。
それともいつも準備してあるはずの朝食がないことで妻の不在に気が付いたのだろうか。


どちらでもいい。
昨日帰らないと決めた時点で、私の覚悟は決まったのだから。





味噌汁が出来上がったことろで、リビングから静かな朝を壊す足音が聞こえてきた。
篤人くんが起きてきたのね。
おはようと挨拶をすると、返事ではなく急に抱き締められた。


「よかった、……帰っちゃったかと思った……」


篤人くんは、大げさに、まるで迷子の子どもが親と出会えた時のような顔をしていた。
昨日何度も抱き締めあったというのに、朝こんなに明るいリビングでされると急に羞恥が込み上げてきた。


「まだ寝ぼけてる?顔洗ってきたら?」


なるべく、そっけなく。
初めて一緒に過ごす朝が照れくさいのがばれないようにした。

2→←7



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (64 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
129人がお気に入り
設定タグ:内田篤人 , サッカー , 日本代表   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ユリ | 作成日時:2016年9月17日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。