- Life is so beautiful - ３ (ページ6)

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アラームをセットしないまま眠ったというのに、目が覚めたのはいつもより少しだけ遅い時間。
いつもよりも睡眠時間が随分と短かったけれども、やたらと身体が軽く感じた。
起き上がってまだ眠気が抜けきらない頭をぶんっと振って周りを見る。

あ、そっか…
昨日というか、今日Aさん泊まったんだっけ。

なんで、いないの？

まさか帰っちゃったとか、咄嗟にそんな考えが浮かんでしまって俺は慌ててベッドを飛び下りた。
ベッドルームを勢いよく飛び出すと、リビングに向かう。

そこにもAさんの姿は見えない。
本当に、帰ったのかよ……
リビングで立ちすくむ俺の背後から、ドアの開く音が聞こえてきた。

「おはよう、もう起きたの？」

すっかりいつもの姿に戻ったAさんが立っていた。

「……篤人くん？」
「よかった、……帰っちゃったかと思った……」

急に抱きついた俺をAさんはぐいっと押し返す。

「まだ寝ぼけてる？顔洗ってきたら？」

可愛くない、昨日はあんなに素直に抱き締め返してくれたのに。

顔を洗うついでに、シャワーを浴びた。
頭から熱めの湯に掛りながら、今日一日のことを考える。
チームは遠征なので、今日明日は実質俺はオフなわけで。

Aさんはどうするんだろうか。このまま帰ってしまうんだろうか。
朝になっても、俺自身がスッキリしても、それでもまだAさんを帰したくなかった。
とはいえ、今日は土曜、大体のドイツの会社は休日だ。ということはAさんの旦那さんの会社だって休みだろう。

もしAさんが帰ると言ったら、俺はどう言えばいいのだろうか。
もしAさんが帰らないと言ったら、俺はどう言えばいいのだろうか。

今更ながら、Aさんが出した『帰らない』という選択の大きさに気が付いてしまった。

そして俺の『帰らないで』が、それだけの選択をAさんに委ねたのだと、その重みを知らされた。

けれど、後悔は、していない。
俺にはAさんが必要だったし、そのことでAさんが責められるのは間違っている。
責められるべきは俺で、その覚悟は俺にはちゃんと、ある。

まるで試合前みたいに、軽く自分の頬を両手で挟むと気合を入れた。