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あー……もー……やっべ……
俺の腕の中で穏やかで美しい微笑みを讃えた寝顔に、心臓の周りからじんわりと温もりが広がって、ふふっと思わず笑みが零れた。
何か、信じられねー……
今のAさんから、数時間前のAさんの姿は想像もつかない。
そう。たった数時間前。
初めて肌を合わせた。
やっとひとつに繋がった。
思いだしただけで胸が震える。
あんなにも自分の心を、身体を掻き乱して翻弄したAさんが、今こうして素直にこの腕の中に収まっているなんて、まるで夢みたいだ。
でも、夢じゃない。
Aさんは、俺の腕の中にいる。
ピピピ、と規則正しい電子音。
聞き慣れないソレを遠くに聞きながら、覚めきらない頭が少しずつ思考を取り戻す。
いけない、寝過ごしちゃった───と、飛び起きかけてハッとした。
あ、そっか……
急激に現実に引き戻された意識が、次に認識したのは隣で繰り返される規則正しい呼吸の音。
電子音の正体はいつの間にセットしたのか、アラームを慎ましく主張する彼の携帯電話。
細身のくせにがっちりした大きな身体の向こうに手を伸ばして止めようとするのに、私は動けなかった。
原因は、私の腰の辺りをがっちりとホールドして身動きをとれなくしている篤人くんの腕。
そうこうしてるうちにアラーム音が鳴りやんだので、私は諦めて大人しく彼の腕の中に戻る事にした。
こんな風に誰かと朝を迎えるなんていつ以来だろう?
記憶を辿らないといけないほど久しぶりということは確かだったので、考えるのを止めた。
幸せって、こういうことなのか……
好きな人と身体を繋げるということが、どれほど幸せなことなのかを、私は初めて知った。
愛される喜びと、愛する喜びを、初めて感じることができた。
それを私に教えてくれたのは、すぐ隣で眠る篤人くんだ。
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作者名:ユリ | 作成日時:2016年9月17日 17時