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私たちは何度も口づけをした。
舌を絡ませ合って、唇をやわらかく噛んで、吸って。
息が上がるのは篤人くんの腕の中で酸素が薄いからなのか。
それとも扇情的な篤人くんの口付けのせいなのか。
「場所、移動する?」
耳元に触れる熱い囁きに、私は頷くしかできなかった。
篤人くんの、全てが欲しかった。
無意識に寝返りを打とうと身じろいだ浅い眠りの中、肌に残る心地良い熱に目が覚めた。
暖房をつけたままの部屋は少し暑い。
首筋を伝う汗も、じっとりと湿った空気も不快に感じないのは、腕の中にある確かな存在感のせい。
Aさんの、その優しい重さのせいだ。
小さく絞ったルームライトの明かりを頼りに、片手を目一杯伸ばして頭上にあるはずの携帯を探る。
腕の中のAさんを起こしてしまわないように、細心の注意を払ってゆっくりと……
できるだけ気を遣って探ったのに、努力の甲斐無くスプリングが傾き、規則正しい呼吸音がピタリと止んだ。
「あつ、と……くん、も……、朝……」
「ごめん。まだ大丈夫」
「ん」
薄らと開かれた睫毛は再び閉じられる。
そのまま眠りに落ちるだろうと思っていたAさんはもぞもぞと身体を寄せてくる。
そして存在を確かめるみたいに俺の胸に頬を寄せ、ようやく安心したのか、再び寝息を立て始めた。
Aさんの子供みたいな一連の仕草が嬉しくて、可愛くて、自然と唇が緩む。
良かった、部屋が暗くて。彼女が寝てて。
だって今、俺はきっと酷い顔してる。
だらしなく緩みきって、ヤバいくらいに崩れてるに違いないから。
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作者名:ユリ | 作成日時:2016年9月17日 17時