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シャワーを浴びて、パジャマで出てきた私を見て篤人くんは一瞬驚いた顔をしたけれど、次の瞬間笑ってくれた。
よかった、私のなけなしの勇気はちゃんと通じたみたいね。
篤人くんは私と入れ替わりでバスルームに入っていった。
私はソファに座り、すっかり温くなってしまったワインをグラスに注ぐ。
部屋の中にはシャワーの湯がタイルの床にたたきつけられる音が微かに聞こえてくるだけ。
その音を聞きながら、私は目を閉じた。
追い払っても追い払っても、子供みたいに思い切り泣いた自分が頭に浮かんできてしまう。
冷静になった頭で、涙ながらに篤人くんに思いをぶつけた自分を思い返してみたら、叫びだしたくなる衝動が混み上げてきた。
それでも心はやけに軽くて。
「何、変な顔してんの」
篤人くんの気配がして、私は慌てて息をつく。
いつの間にか隣に座っている篤人くんと視線が絡み合うと、やはりにこりと微笑みかけてくれる。
私を安心させてくれる、私の大好きな表情。
篤人くんの微笑みに、いつの間に心が奪われてしまったのだろう。
愛しい。
そう思ったら、言葉がぽろりと口から転がり落ちた。
「好き」
あまりに突然だったから、篤人くんは相当驚いたようだ。
きょとんとした顔で、私をまじまじと見る。
まるで珍獣でも見たときのようなリアクションに少し傷付く。
「好きよ、篤人くん」
今度は篤人くんの目をじっと見つめながらゆっくり伝える。
「……びっくりした。
まさか、今そんな嬉しい言葉が聞けるとは思ってなかったから、固まった。
ねぇ、もう一回言って」
何度でも言ってあげる。
好き、大好き、
篤人くんが、好き。
あんまり強く抱き締められたものだから、最後は苦しくて言葉にできなかった。
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作者名:ユリ | 作成日時:2016年9月17日 17時