Life 22 ページ41
泣いて泣いて泣き疲れて、篤人くんの腕の中でぼんやりとしていたら、顔を洗っておいでよと言われた。
「顔、すごいことになってるから」
「え……」
「パンダみたい」
溜めに溜めた5年分の涙は、どうやら私のマスカラまで溶かして流れていったようだ。
「やだ、恥ずかしい……」
壮絶な顔になっているだろうことを思い浮かべ、顔を背けようとしたけれども篤人くんは私の頬を両手でがっちりホールドする。
「これはこれで可愛いよ?」
「可愛いって、笑いながら言われても説得力が……それにね、篤人くんより5つも上なのよ、私」
可愛いだなんて言われる年じゃもうないの。
「年の差とか、そんなの今さら過ぎるっしょ。
それに、年上だろうがなんだろうがAさんは可愛いよ。
泣いてる姿とかすげー可愛いかったよ。でも、俺の腕の中だけで泣いてね」
「あの号泣を可愛いだなんて思えるなんて、篤人くんのポイン……っ」
最後までは言うことができなかった。
言葉の途中だった唇に、篤人くんの唇が深く重なる。
私の髪を撫でる篤人くんの手が優しくて、温かくて、その熱が私の心を熱くする。
以前に感じた躊躇の気持ちなんて、全然思い出さなかった。
初めてキスをしたときみたいな甘酸っぱい気持ちにさせられて。
唇が離れると急に気恥ずかしくなった。
「そんな顔、他の人には見せないで」
そう言って、私は再び篤人くんの腕の中に閉じ込められた。
バスルームの鏡で見た自分の顔に、思わず声を上げて笑ってしまった。
パンダなんて可愛いものじゃない、こんな顔をして篤人くんとキスしただなんて、これは由々しき事態。
篤人くんもよくまぁ、こんな顔の女にキスしようと思ったわね。
先ず、顔を洗おうとして、途中で手を止めた。
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作者名:ユリ | 作成日時:2016年9月17日 17時