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目が覚めて、
頭が働き始めるまでぼんやりして、
熱いシャワーを浴びて、
朝食を作り。
教室を開く準備をして、
お稽古をつけて。
一人分の夕食を作り、
機械的に食べるだけ。


きっと、この先も、呼吸が止まるその瞬間まで、そうして何となく生きていくのだろうと思っていた。


だけど、


「だけど、篤人くんに出会った。
 篤人くんと出会って、私はようやく自分の怠惰さに気が付いたの」


新しい人生の目標を見出すこともなく、ずっと逃げ続けてきた自分を知らされた。



「私は、篤人くんと違って、自分の人生を自分の足で歩いていないのよ。
 今の状況を誰かのせいにして、ずっと逃げ続けてきたの。
 自分で、自分の人生を捨てて、終わらせちゃったのよ」



ようやく、私の長い長い告白が終わった。







「よく逃げずに頑張ったね」


親が子供を慰めるみたいな慈愛に満ちた表情で篤人くんが笑ってくれた。
その優しい表情に、鼻の奥が痛くなる。


身体が小刻みに震えた。


唇がわなない、だけどそれを悟られたくないから、私は俯いて表情を隠した。


膝の上に置いているクッションの生地を意味もなくじっとにらみつけた。
下唇を噛んで押し黙って、震えそうになる吐息を耐えた。


「ねぇ、Aさん、泣きたいときには、素直に泣いたらいいよ。
 Aさんはいつも感情を押し殺して、よくないよ。
 状況は変わらなくても、吐き出したら少し楽になれるよ。
 今までそれができる相手がいなかったのかもしれないけど、俺じゃだめ?
 一人で胸に大きな悩みを抱えてないで、泣いて涙と一緒に吐き出したら、気持ちはずっと楽になると思うよ」

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設定タグ:内田篤人 , サッカー , 日本代表   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:ユリ | 作成日時:2016年9月17日 17時

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