- Life is so beautiful - ３ (ページ35)

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Life 21 ページ35

「変わったのは、こっちに来たから？それとも、こっちに来ることになったから？」

いつまでも避けてはいられない、最後の私の壁。
ようやく、私はそこに手を伸ばそうとした。

「大学４年の秋のこと。就職先も決まって、後は卒論と国家試験だって時だったわ」

よかった、声は震えてない。
話を始めると、篤人くんの手が私の手を握ってくれた。

その手に励まされ、私は最後の自分の物語を続ける。

「珍しく家族そろっての夕食の後のことだったな。
仕事で忙しい兄がいたし、遊んでばかりの弟もいたから、よく覚えてるわ。
　いつも小言ばかりの母が妙に機嫌がよくて、それが気味悪かったのよね」

弟も大学生になったし、みんなでお酒飲んで。そんなこと初めてだったから、妙に頭に残ってる。

珍しく饒舌な父、
機嫌の良い母、
沈んだ様子の兄、
無邪気な弟、
そして疑心暗鬼な私。

不安は見事的中した。

「突然ね、父に言われたの、結婚相手が決まったって」

喉が、からからだった。
私は目の前に置かれたグラスに入ったワインを一気に流し込む。

「相手は、旦那さん？」
「……うん。
　資金はあっても技術力がイマイチな父の会社と、
　技術はあっても資金力がない義父の会社との利害が一致したのよ。
　その繋がりを強固にするために、私とあの人が結婚することになったらしいの。
　このご時世で、まさかの政略結婚よ？考えられる？」
「ぶっちゃけ、漫画とかドラマとかそんな世界のモンだと思ってた」
「でしょ？私だってそう思ってた」

父の会社の経営状況なんて何も知らなかった。
兄は大学を卒業すると同時に父の会社に入社し、そのうち後を継ぐだろうから安泰なんだと思っていた。
実際、会社はそこまで危機的な状況ではなかったのだと、後になって兄から聞かされた。
それでもその時は、いかに会社の今後は不安定で、私の結婚が大切かを懇々と説かされた。
そして、私は、一族の危機を救う人身御供にさせられた。