- Life is so beautiful - ３ (ページ29)

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Life 20 ページ29

過去と向き合うことが、思ったほど心の負担になっていなかったことを知った。
ずっと目を背け続けてきたのは一体何だったのだろうと呆れるくらいに、私は冷静に受け止めることができた。

時間というのは、何よりの特効薬なのかもしれない。
１０年も経てば、さすがに傷も癒えるのだろう。
目を背けていたから、気付かなかった。
篤人くんに話すことができて、本当に良かった。

「ありがとう、篤人くん」
「どういたしまして」

まさかお礼を言われるなんて思っていなかったのか。篤人くんは嬉しそうに、でも少し恥ずかしそうにはにかんだ。
その表情を見て、彼がどれだけ私のことを気にかけてくれていたのかが分かった。
篤人くんの優しさが心にぐっと染みてくる。

「もう、外真っ暗だね」

窓の外を見れば、もうすっかり日は落ちていた。
シャッターを開けたままにしているので、部屋も冷えはじめてしまっている。

「あー、本当だ。いつもはさ、嫌だったんだよ、夜になるのが。
　Aさんは帰っちゃうだろ？それが嫌だった。
　今日はずっと一緒にいれるんだって分かってるから、すげー嬉しい」

篤人くんは自分の欲求を隠すことをしなくなった。
それはすでに自分の気持ちに正直になったからだろうけれども、私は付いていけずにいる。
若さゆえの正直さが、眩しかった。

「晩御飯の準備するね」

だから、強引に話をすり替える。

「あ、そうだ。今日は篤人くんにパスタ茹でてもらうからね」
「えー、覚えてたんだ」
「もちろん。簡単だから覚えて下さい」
「面倒くせーなー」
「料理のできる男の人ってもてるわよ？」
「いーよ、別に。あ、でも、Aさんは？」
「もちろん、私にも」
「……じゃあ、する」

まるで１０代の男の子と話しているよう。
唇を尖らせて反論する姿、
こちらを伺うような目線、
一つ一つの仕草が可愛らしくて愛しい。

「ふふっ、じゃあ、準備ができたら呼ぶね」