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Aさんの告白に、驚かなかったといえば嘘になる。
親に敷かれた順調なレールが嫌で飛び出したという、今のAさんでは考えれないほどの行動力。
あ、いや、違うか。
本当のAさんはきっと行動力のある人なんだ。
それは、昨日から俺の側にいてくれることからでも考えられることで。
そんな彼女が、どうして変わってしまったのか、それが気になった。
そしてAさんの、おそらく彼女が心に抱えてた荷物の一つだと思われる、過去。
初めての彼氏をお母さんへの当てつけだけで利用したんだという懺悔。
正直、悲しかった。
でもそれはAさんがそんなことをしたなんて、という失望ではなく。
きっと女の人にとってすごく大切なんだろうと思うものを、そんなことのために失ったということ。
高校生のAさんをそこまで追い詰めた環境。
そして、自分を大切にしなかったAさん自身。
それが、悲しくて仕方がなかった。
Aさんが背負っている陰が、少しだけ理解できた。
優しいAさんは、今でも後悔しているんだ。
自分のしたことが周囲の人を傷付けてしまったことを。
だけど気が付いて。
お母さんだって、その彼氏だって、Aさんのことが大切だったから、自分を大切にしなかったAさんに怒ったんだよと。
「でも、そのことがあって今のAさんがあるんだから、
だから、関係ない。
それだってAさんを作ってる要素っしょ」
いつまでも引き摺らないで。
俺は今のAさんをつくっている要素、全部受け止めるから。
俺の言葉でAさんの傷が癒えるとは思えない。
それでも言わずにはいられなかった。
顔を覗き込むと、眉を寄せて怒ってるような顔をしていた。
それは怒っているわけではなく、泣きたい表情なんだと気が付いたのはいつだったんだろう。
あぁ、Aさんは、まだ泣けないんだね。
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作者名:ユリ | 作成日時:2016年9月17日 17時