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「高校に入って、そのことを友達に話したら羨ましい、好きなもの買っていいだなんて贅沢だね、いい両親だって言うんだけど、私にはそうは思えなかったの。
だって、カードを使えばその明細はすべて親の元にいくのよ?
どこで何を買ったか、何に遣ったか、私が何をしているかなんて全部筒抜けなのよ」
「……窮屈な、自由、だね」
ゆっくりと選ばれた言葉が嬉しかった。
篤人くんの言うことは尤もで、自由にしていいと言いながら管理されていることが窮屈で息苦しくて仕方がなかったから。
「あんまり息苦しいから、その彼氏とラブホテルに行ってカード使ったの。
ざまぁみろって。私を束縛したつもりにならないでって。
案の定、母親に知れて散々に詰られたわ。怒鳴られるとかじゃないの、人格を否定されるほど詰られたわ。
それを機に母は私のことを見限ったんじゃないのかしら、この子はもう自分が手塩にかけて育てた愛娘なんかじゃないって」
「……その彼氏とはどうなったの?」
「その彼氏とはそれっきり、別れちゃった。
『俺はお前にとって親に反抗するためだけの道具でしかないんや』って言われたなぁ。あれは辛かった。
だって、その通りだったから。
ただ親へのあてつけだけで、私を好きだと言ってくれた人を傷付けたんだもの。
今考えても、本当にひどいことをしたと思うし、
あの頃の私に心底嫌気がさすわ」
篤人くんは何も言わない、言ってくれない。
私の汚い部分を軽蔑しただろうか。
されても仕方がないのは分かっているけれども。
「ね、私は篤人くんの思っているような人間じゃないの」
だけど、そんな最低のことをした過去の私が今の私を作っている。
私という人間を知ってもらうには、全てを知ってほしかった。
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作者名:ユリ | 作成日時:2016年9月17日 17時