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「初めて彼氏ができたのは高校2年生だったっけ。確か、同じクラスの陸上部の男の子」
もう顔が薄らとしか思い出せない初めての彼氏。
放課後の教室で『好きや』と告白されたんだっけ。
「いいなぁ、しっかり青春満喫してんじゃん。
俺とは大違い。俺なんてサッカーしかしてねーよ」
隣では篤人くんがクッションをぼすぼすと叩いている。あれ、嫉妬してくれてる?
自分なんて私なんかの何十倍も女の子にもててたくせに。
「でも、楽しかったのは学校だけ。家に帰ったら居心地が悪かったわよ」
私が反発のように楽しめば楽しむほど母の私への干渉は大きくなっていった。
帰宅時間が遅くなれば必要以上に叱られ、休日に出掛けると言えばどこの誰と何処に行くのかと詮索され。
「あ、あの事件があったのも高校だったっけ」
「事件?」
「うん、母と決定的に仲違いした出来事があったの」
それ以来、母との関係は修復できないほどに悪化してしまったあのこと。
「篤人くんはお小遣いをもらってた?」
唐突にした質問に篤人くんは面食らった様子だったけれども、深く追求することなく答えてくれる。
「定期的っていうか、必要なときにちょうだいって言ってた。
でも、遣うってったって帰りにコンビニで肉まん買ったり、漫画買ったりとかくらいしかなかったなー」
高校時代はとにかくサッカー漬けだったという昨日の話を思い出した。
そして、篤人くんの予想通りごくごく一般的な返しに、やはり今でも母への反発を隠しえない。
「私はね、物心ついたときからクレジットカードを渡されてたわ、家族カードを。
これで必要なもの、好きなものを買いなさいって」
つい口調が固くなってしまった。
それは篤人くんにも伝わっているようだ。
篤人くんは何も言わずに、ただ黙って聞いてくれた。
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作者名:ユリ | 作成日時:2016年9月17日 17時