Life 19 ページ22
公園を後にし、私たちは言葉を交わすことなく歩く。
口を開いてしまうと、何となく決心が鈍ってしまいそうだったし、篤人くんも私の気持ちを察してくれたようだった。
時折、『大丈夫?』といいたげな視線を向けてくる。
私はぎこちない笑みを返すことしかできなかった。
大丈夫、でないかもしれない。それでも私は先に進まなきゃいけない。
篤人くんが、側にいてくれるから。
篤人くんの、側にいるためにも。
私は、過去と向き合わなくちゃいけない。
そっと絡められた篤人くんの指に、自分の指を絡め返す。
大丈夫、私は、大丈夫だ。
冬近いドイツの昼間は、日本に比べると随分と寒い。
ゆっくりと歩いて帰って私たちの身体は家に帰った頃には冷え切っていた。
「もう冬が始まっちゃうなー。俺、寒いの嫌いだからなー」
「ココア、入れようか?それとも、ドイツらしくホットワインでも作ろうか?」
「ホットワイン?ワインって温めてもいいの?」
「ただ温めるんじゃなくて、砂糖やスパイスを入れて作るんだど、身体温まるよ」
「へー、飲んだことねー、俺アルコール苦手だからなぁ。
でもせっかくだし、飲んでみたいかも。あ、Aさんの一口貰えたらそれでいいんだけど」
「分かった。じゃあ篤人くんにはココアで私用にホットワインにするわ」
「ありがとう」
篤人くんには熱いココア、私にはちょっと材料が足りないホットワイン。
広い広いソファ。けれども私たちは隣り合って座った。
「一口、ちょうだい」
「どうぞ。ここにオレンジの皮が入ったらもっと美味しいんだけどね」
「あ、これ普通のワインよりも全然飲みやすいかも」
アルコールが苦手だという篤人くんだったけれども、一口二口と口に含む。
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作者名:ユリ | 作成日時:2016年9月17日 17時