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「でも、楽しかった」
思いっきり身体を動かして、大きな声で笑って。
何より、篤人くんが好きなサッカーをほんの少しだけでも知ることができて。
「そりゃよかった」
「ありがとう」
「どういたしまして」
未だ芝を駆け回る、疲れを知らない子どもたちをただ眺める。
その姿に私は幼いころの篤人くんを重ねていた。きっと彼もあんな風に毎日走り回っていたのだろう。
「Aさんって、ドイツ語はペラペラなんだね」
「どうしたの、急に。ドイツ語本気で勉強する気にでもなった?」
「や、別に。サッカーできる位に分かったらそれでいいし。英語も話せるの?」
「一応ね。小さい頃から英会話教室通ってたしね」
「ドイツ語も?」
「……え?」
「ドイツ語も小さいころから、勉強してたの?」
何気ない質問が、いきなり核心をついてきた。
「……結婚することが決まってから、半年ほど集中して勉強したから」
「そうなんだ、……ごめん」
いつかは話さなければいけない、私の全部。
誰にも言えなかった私の人生の懺悔。
話すなら、篤人くんがいい。
篤人くんでないと、話せない。
「ねぇ、私の話、きいてもらってもいい?」
篤人くんには、知ってもらいたい。
「……ここで?」
「できたら、2人だけになれるところがいい」
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作者名:ユリ | 作成日時:2016年9月17日 17時