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予想通り、買ってきたものを全て平らげてくれた篤人くんはベンチに寝転がる。
「あ、そうだ、せっかくだから……」
「ちょ、篤人くんっ!」
最初は反対に向けた頭をわざわざ反対に向けると、私の制止を振り切って私の膝の上にのせる。
「篤人くん、誰かに見られたら、」
「誰もいないって」
「でも……」
私と違ってこの街で篤人くんの顔はそれなりに知られているだろう。それに、私は。
「別に見られてもいいよ。恋愛禁止じゃないいんだし」
俺の気持ちは誰かに恥じるようなものじゃないから。
「あー、幸せー」
その声があまりに穏やかなものだから、これ以上異を唱えることができなかった。
「ね、頭撫でてくれない?」
「こう?」
おでこから撫で上ると篤人くんはまるで猫のように身体を丸くさせた。
寝癖がついたままの、整髪料もつけていない髪はちょっとごわついていたけれども、あぁ男の人なんだなぁと今さらなことを感じてしまった。
髪を撫でる私の手に篤人くんの手が触れてきた。
「……こうしてると、すごく落ち着く」
篤人くんは、私といて落ち着くんだ…
それなのに、私は。
「まだ、難しいこと考えてるの?」
閉じていた瞼はいつの間にか開いてて、私の心を見透かすような目で見上げられる。
「今だけは、難しいこととか面倒なこととか全部、忘れちゃって」
俺だけを見ててよ。
誰かに見られたらという危機感もあるにはあったけれども、私は動けなかった。
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作者名:ユリ | 作成日時:2016年9月17日 17時