- Life is so beautiful - ３ (ページ16)

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「私は……」

いくら待っても、その続きを聞くことはできなかった。

覗き込んだAさんの瞳に俺は映っていない。
もう随分と近づいたはずのAさんと俺には、まだあと少し隔たりがある。
Aさんの中にはまだ俺が踏む込むことを許されていない場所があって。
その場所こそがAさんの気持ちを縛り付けていて。
きっとそこを越えなければAさんは自由になれないんだ。
そう思った。

俺は、急ぎすぎていた。
自分自身が解放されたからAさんもそうなんだと勘違いしていた。

Aさんは、まだ苦しんでいる。
俺がしなきゃいけなかったことは、自分の気持ちを押し付けることじゃない。

側にいて、Aさんを救うことなんだ。
涙を流せないほど何かに縛り付けられているAさんを、解放してあげることなんだ。

「Aさん、ごめん……」
「違うの、篤人くんが謝らないで」
「うん、でも、ごめん」

Aさんのこと考えもせずに、気持ちを押し付けてごめん。
俺の気持ちにすぐに応えられなくてもいいから。
でも、忘れないでいて、俺がAさんのことを好きだってことは。

「ありがとう。
　いつも私の気持ちを大切にしてくれて」

それがAさんにとっての最大限の表現なんだろうことは分かった。
今は、その言葉で十分だった。

「……そろそろ、パン食わない？
　まだ動き足りないっちゃあ動き足りないんだけど、その前に腹ごしらえしたいなー」
「そうだね」

珍しい快晴のもと、いつまでもこんな雰囲気でいるのが嫌だった。
それでなくてAさんと一緒にいられる時間はあまりないんだから。
もっと楽しい思い出を作りたいと思った。