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「こうやって篤人くんも小さいころからずっと練習してきたの?」
Aさんは急に真面目な声になって聞いてきた。
「そ、こうやって地道にパスの練習の繰り返しだったなー」
「それがあって、今の篤人くんがあるんだね、って、……!」
「はははは、無駄口叩いてるからだよ。10年早い」
ただボールを蹴るだけ。
しかも相手は初めてボールを蹴るような超初心者。
それでも、身体の奥がじんわりと熱を帯び始め、身体が疼く。
気持ちが良い。
試合とは比べ物にはならないけれども、こうやってボールを蹴るだけで、胸が熱く痺れている。
こうやってボールと対峙すると、身体がボールを蹴りたくて仕方がないと熱を孕み震える。
心が弾んで、ワクワクする。
そういえば、サッカーを始めたばかりの頃、いつもこんな気持ちだったような気がする。
結局、自分はどこまでもサッカー馬鹿なのだ。
きっとこの先も、それは変わらないだろう。
「ねーAさん」
「んー」
蹴ることに集中しているのか聞いているのかいないのか分からない返事。
「ありがとね」
でも、いい。
「何がー」
「俺、Aさんがいなきゃ大事なこと、忘れるところだった」
「どういたしまして」
「ねー聞いてる?」
今なら、言えると思った。
「聞こえてるよー」
ずっと言いたくて、言えなかったことが。
「俺はさ、Aさんのことが好きだよ」
Aさんの足元でボールが止まった。
逆光でAさんの表情は見えない。
「こんなに、好きになるなんて思わなかった」
最初は、好奇心だった。そうして哀れんで、愛おしんで。
だけど、どんどん変わっていくAさんを見て、好きで好きでたまんなくなって。
どんどん変わっていくAさんに、俺も変わらなきゃって思わされて。
「気が付いたら、どうしようもないくらいに好きになってた」
蹴り返してくれないAさんの元に歩み寄る。
「好き、
Aさんのことが、好き」
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作者名:ユリ | 作成日時:2016年9月17日 17時