永瀬くんは、ニセのプリンス様【1】 (ページ36)

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すれ違う度、集まる女子からの視線。

無断で携帯を向けて写真を撮る人や

黄色い声を上げながら友達に耳打ちする人。

廉「さっきより人やばいな」

その原因はもちろん、私の隣にいる彼なんだけど。

どうやら彼は他校生にも人気らしい。

急遽ヤツの威圧で決まった、

ヤツとの模擬店回り。

正直、前々から郁美とは約束してたから

ドタキャンすることに気が引けてたけど、

優しい郁美は快く受け入れてくれて、

なんなら「楽しんでねっ」と笑顔で見送ってくれた。

永瀬くんの友達の一言がなかったら

今頃郁美と楽しく模擬店回ってたのに…。はぁ。

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あ「ねぇ、やっぱり着替えに戻っていい？」

廉「なんで？」

あ「なんでって…」

廉「別にええやん。着替えへんでも。」

あ「えー…」

浴衣のまま回るのは結構歩きづらくて

大変だから着替えたいのに

絶対教室まで戻るのがめんどくさいだけでしょ…

廉「浴衣、似合ってんで」

口角を上げ、私に優しく微笑みかける。

甘い台詞を口にした後、

自然と私の手を取り、

人をかき分けて前へ進み出した。

今、私の前にいる人は

きっと表向きの永瀬くんだ。

極悪人の彼があんな甘い台詞言うはずがない。

きっと周りに人がいるから

みんなの理想の"王子"を演じてるだけであって、

永瀬くん本心の言葉じゃないことくらい

私が一番分かってる。

頭の中では分かってるはずなのに。

…どうしてだろう。

そんな台詞に、私すごい意識しちゃってる。

今耳がすっごく熱い。

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