日の沈む刻 ページ9
「危なかったねぇ」
コロラドアイトは月人へと放った水銀を収め、事もなさげに呟いた。
「コロラドアイト！大丈夫？どこも欠けてない？」
「ふふっ、流石はお兄様。かっこよかったですわ！」
ダイヤが掴んでいた手を離すと、ヘリオはすぐにコロラドアイトに駆け寄って欠けた場所がないかを確認する。コロラドアイトはされるがままにしながらも、触っちゃダメだよぉ、と間延びした声で窘めた。
「びっ……くりしたあ」
「びっくりした、じゃない。こんな場所で何をしていたんだお前は」
草むらにへたり込んでいたフォスが呟くと、シンシャは冷ややかな目を向ける。
「えっ、あー……先生に言われて、目新しいものを探しに」
「目新しいもの？」
「そ。大発見をするぞー」
「すごい棒読みね」
大仰に拳を突き上げる割には抑揚のない声に、確認を終えて満足したらしいヘリオが苦笑した。フォスはへなへなと腕をおろし、目を逸らす。
「はは……思いっきり行き詰まってまして。シンシャぁ、コロラドアイトぉ、なんか知らない〜？」
「触るな危ない！」
「目新しいものねぇ」
シンシャは縋り付こうとしたフォスを寸前で避け、声を荒げた。
「お願いしますよお、大発見がしたいんですよお」
「あらあら」
手をばたつかせるフォスに、ダイヤは困り顔で笑う。シンシャは不機嫌そうにふいと背を向けた。
「俺が知ったことか。さっさと帰れ」
「シンシャ……」
「早くしないと荷物が増えるぞ」
「荷物？」
「……あ！」
シンシャの指差した先には、殆ど海に沈んだ太陽。思い当たったダイヤが声をあげた。
「ごめん、げん……か……い」
日没。とてつもなく燃費の悪いヘリオの限界が訪れたのだ。
「あーん！ヘリオぉ！！」
「言わんこっちゃない」
ダイヤが、眠りについてしまったヘリオの腕を倒れるギリギリで掴んで嘆く。シンシャは深くため息をついた。
「ふふ」
「な、何で笑うんだ……」
「ヘリオが倒れた〜って泣きついてきたシンシャを思い出したのぉ」
「思い出さなくていい！！」
にこにこと楽しそうに笑うコロラドアイトに、シンシャはおもいきりたじろぐ。同じ年に生まれたシンシャとダイヤ、ヘリオはよく一緒に行動していた。そして、その指導役であったコロラドアイトによく懐いていた…否、今も変わらずよく懐いている。突然懐かしい話を持ち出され、シンシャは恥ずかしさにむうっと口を曲げた。
「……どーすんのこれ」
「引きずって行けばいいんじゃなぁい？」
「扱い！？」
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作者名：ガマ花 ・Qual ・はんむらび。 x他2人 | 作者ホームページ：なし
作成日時：2018年6月23日 10時
