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#09 出発 ページ9

真っ直ぐ進んだ先にある大きな部屋に総長はいるはずだ、という瓜生の言葉通りに、少女は何も考えずに克城の廊下を歩いていた。
 そのさなかで、竹筒にたっぷりと詰められた血を舐めるように飲み、喉の渇きだけを潤す。人であった頃と比べればずいぶん美味しく感じるが、いくら腹が減っていたとしても、誰のものかもわからない血液を一気飲みするのは何となく気が引けた。カバネリになったという事実を理解するのは簡単だが、人とは違う特性を自分のものとして受け止めるのはまた違う。
 生きてる間にこれが馴染むことはまずないだろうと思いながら、少女は口につけた竹筒を傾けた。

 少し歩くだけで誰かと出会う。そのだいたいが見慣れない少女に首をかしげながらその姿を見送る。
 集中する視線が妙にこそばゆく、初めは物珍しさからあちこちへ視線を向けていた少女も、次第に俯きながら歩くようになった。
 歩き続けているうちに、克城の操作部屋らしきスペースにたどり着いた。念のため「失礼します」と声をかけ中へ入ると、桜色の美しい髪が目に入る。少女はようやく知り合いに会えた嬉しさからその背中に駆け寄った。

「美馬様!」

 名を呼ばれ、美馬は振り向く。少女を一瞥すると「来たか」とだけ言った。

「遅くなってごめんなさい。女の子は準備に時間がかかるんですって言ったら許してくれる?」
「許すも何も、そもそも謝ることはない。時間は特に決めていなかったからな」

 淡々とした言葉を、彼の気遣いと受け取った少女は「ありがとう」と言って笑った。
 これから案内してもらうというのに、城の中にあるものが珍しくて歩いている途中も目移りしていた。そのせいで遅くなってしまった、という事実はわざわざ言うことでもないだろうとついでに呑み込む。

「でも、美馬様が案内してくれるなんて驚いたな。起こしに来てくれたし、その役は瓜生かと思ってたんだ。総長さんに案内してもらうなんてすごく贅沢だね。もしかして、新米みんなにこうしてるの?」
「お前が何をするかわからないから私が引き受けただけだ。ただでさえ忙しいというのに、好き好んで仕事を増やしはしない」

 深いため息をついた美馬に対し、少女は「そりゃそうか」と悪戯がばれてしまった子供のように舌を出した。その動作を見て、昨日の『何も触らないから見学させて欲しい』という言葉はやはり信用ならないと、美馬は少女の動向に目を光らせることを密かに心に決めた。

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設定タグ:甲鉄城のカバネリ , 美馬 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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(プロフ) - 小林弘実(app)さん» ありがとうございます。残り話数はそう多くありませんが、これからもお付き合い頂けると幸いです! (2016年8月4日 23時) (レス) id: 333258c32a (このIDを非表示/違反報告)
小林弘実(app)(プロフ) - 詩さん» そうですか。これからも創作頑張ってください! (2016年7月31日 21時) (レス) id: 44473ae3b7 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 小林弘実(app)さん» 小林様、この度は当作品の閲覧、そしてコメントありがとうございます!楽しんで頂けているようで嬉しい限りです…!この作品以外の活動となりますと、別のアカウントで一次創作のような短編を詰め込んだものがありますが、二次創作物はこの作品のみとなっております。 (2016年7月31日 18時) (レス) id: 333258c32a (このIDを非表示/違反報告)
小林弘実(app)(プロフ) - いつも楽しく拝見させていただいております( ^ω^ ) 他で小説は書かれたりしないのですか? (2016年7月31日 17時) (レス) id: 44473ae3b7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2016年6月26日 11時

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