検索窓
今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:26,848 hit

#21 友達 new ページ21

「本当に、無い話なの?」
「実際、この城に乗ってるカバネリはお前含めて三人だが、見事に女しかいない。何なら紹介してやるぜ」

 どうする?と尋ねれば、少女はそのカバネリのふたりをわざわざ呼び寄せるのも忍びないから遠慮しておく、と首を振った。

 本来ならば女にしか効かないはずのカバネリになる手術がうまく適合した。あの美馬様のことだ、そんなこともありそうだ。
 ひっそりと心の中で疑問に決着を付ける。

 何でそんなに気になるんだよ、と少女の言動を怪しく思った瓜生の質問に対しては、美馬が隠しているであろうことを声に出すわけにもいかず、結局「お兄ちゃんも、あたしみたいに延命できたのかなって思っただけ」と哀しみをたたえた声音で少女は答えて逃れることにした。その悲痛な表情に何か思うところがあったのか、日頃から飄々としている瓜生も流石に「そうか」と短く言葉を終わらせた。
 因みに、少女に兄がいたことはこれまで一度として無い。よくしてくれた相手に嘘をつくことに心が痛んだが、これ以上、言及されなさそうな雰囲気に少女は密かに安堵していた。

「瓜生は物知りなんだね」
「こんなことで褒められたって嬉しくねぇよ。それに、俺がこの情報知ってたのは偶然みたいなもんだし」
「そうなの?」
「克城の……というか、正確には総長の、だな。あの人の力になれるならカバネリになるのも良いかもって一時は思ってたんだよ。結局、挑戦する前に道は断たれたけど」

 そう言って、瓜生は肩をすくめてみせた。
 ひとりの少年にそこまで思わせる美馬という存在を、少女は心の中でほんの少し恐れた。
 この駿城に乗る者は全て、本気で彼に自分の命を捧げても惜しくないと思っている。現に少女も、気づかぬうちに彼にそのような思いを抱いていた。昨日の夜の少女の言葉に嘘がないことが何よりの証拠だった。



「でも、カバネリにならなくたって、きっと瓜生はすごく強いんだろうねぇ。戦ってるところ、ちょっとだけ見てみたかったな」
「生きてるうちにチャンスがあれば見せてやるよ。楽しみにしとけ」
「でも、カバネが襲ってきたらの話だよね。それって楽しみに出来ないような……」
「俺たち狩方衆やカバネリのふたり、何より美馬の腕が信用ならないってか?」
「そんなことは言ってないよー!」

 悪戯っぽく笑う瓜生に少女は笑顔返す。
 友達との戯れを思い出させるその楽しさに、少女は初めて、あと二日で自分の命を失うことを悲しく思った。

続く  (更新停止中) お気に入り登録で更新通知を受け取ろう

←#20 疑問 new



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (42 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
44人がお気に入り
設定タグ:甲鉄城のカバネリ , 美馬 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

(プロフ) - 小林弘実(app)さん» ありがとうございます。残り話数はそう多くありませんが、これからもお付き合い頂けると幸いです! (2016年8月4日 23時) (レス) id: 333258c32a (このIDを非表示/違反報告)
小林弘実(app)(プロフ) - 詩さん» そうですか。これからも創作頑張ってください! (2016年7月31日 21時) (レス) id: 44473ae3b7 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 小林弘実(app)さん» 小林様、この度は当作品の閲覧、そしてコメントありがとうございます!楽しんで頂けているようで嬉しい限りです…!この作品以外の活動となりますと、別のアカウントで一次創作のような短編を詰め込んだものがありますが、二次創作物はこの作品のみとなっております。 (2016年7月31日 18時) (レス) id: 333258c32a (このIDを非表示/違反報告)
小林弘実(app)(プロフ) - いつも楽しく拝見させていただいております( ^ω^ ) 他で小説は書かれたりしないのですか? (2016年7月31日 17時) (レス) id: 44473ae3b7 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作成日時:2016年6月26日 11時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。