#01 出会い ページ1
ガタンゴトンと揺れ動く車体の音が響く中、コンコンと控えめなノック音がした。時刻は日付が変わって少し過ぎた頃で、美馬は珍しい来訪者に疑問を浮かべた。
「(こんな時間に部屋へ来るなど、いったい誰だ)」
特に切羽詰まった様子もないため、美馬は手に持っていた青白く光る怪しげな液体が詰められた試験管を慎重に懐にしまうと、「少し待っていろ」と戸の向こうにいるであろう人物に声をかけ、扉へとゆっくりと歩みを進めた。
鉄でできた、見た目通り重たい扉に近づき取っ手を捻る。押し開ける最中で、空いた方の手には刀の柄を握らせておいた。克城の者たちが自分に刃向かうとは思えないが、念には念を入れて。警戒しすぎがちょうど良い。
そうしてじゅうぶんに警戒しつつ作った隙間から廊下が見えたと同時に目に入ったのは、幼さの残る顔立ちが特徴的な少女だった。
「こんにちは、美馬様」
見下ろすようにして目線を合わせると、少女は美馬へ無垢な笑顔を向けてきた。
無名と背丈は同じに見えるが、彼女と違って年は十四は越えていそうな風貌だ。後ろで手を組み、まるで美馬の言葉を待つように、少女はにこにこしながら彼を見上げていた。
しかし、美馬は動かない。なぜなら彼は、その少女に全く覚えがなかったからだ。また、どうして自分を訪ねてきたかもわからなかった。
最近、カバネリになったものだろうか。しかし、そうなると自分が把握していないわけがない。部下には何かあればすぐに報告しろと命じてある。
瞬時に思考を巡らせたあと、美馬はつとめて冷静に「この部屋に何の用か?」となるべく優しい声色で尋ねた。すると少女は
「あれ、美馬様のところに行けって言われたから来たんだけど、もしかして違った?」
きょとんとした表情のまま首を傾げた。
何が何やらわからず、美馬は思わず眉根を寄せる。
「何だっけ、クロケブリの実験がどうとか、その検体に選ばれたとか言われたんだけど……あ、そうだ、ごめんなさい! あたし、まだ名乗ってなかったや」
当てずっぽうに撃たれた弾丸のように言葉を並べ立てた少女は、ひとり勝手に納得したようにぽんと手を打つ。何か合点がいったようだ。
実はね、と口を開く。
「あたし、検体番号十七のカバネリです。つい最近拾われて、さっき蘇生してカバネリになったばかりだし美馬様が知ってなくて当然かも」
言葉の銃弾が並ぶ。少女の下手な説明のせいか、やはり、美馬の理解は追いつかなかった。
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詩(プロフ) - 小林弘実(app)さん» ありがとうございます。残り話数はそう多くありませんが、これからもお付き合い頂けると幸いです! (2016年8月4日 23時) (レス) id: 333258c32a (このIDを非表示/違反報告)
小林弘実(app)(プロフ) - 詩さん» そうですか。これからも創作頑張ってください! (2016年7月31日 21時) (レス) id: 44473ae3b7 (このIDを非表示/違反報告)
詩(プロフ) - 小林弘実(app)さん» 小林様、この度は当作品の閲覧、そしてコメントありがとうございます!楽しんで頂けているようで嬉しい限りです…!この作品以外の活動となりますと、別のアカウントで一次創作のような短編を詰め込んだものがありますが、二次創作物はこの作品のみとなっております。 (2016年7月31日 18時) (レス) id: 333258c32a (このIDを非表示/違反報告)
小林弘実(app)(プロフ) - いつも楽しく拝見させていただいております( ^ω^ ) 他で小説は書かれたりしないのですか? (2016年7月31日 17時) (レス) id: 44473ae3b7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:詩 | 作成日時:2016年6月26日 11時