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「夜叉!」
「おのれ鬼太郎!!」
夜叉は鬼太郎を忌々しげに睨みつけ、本体の一部である髪の毛を彼のの全身に絡みつかせる。夜叉は鬼太郎の魂を喰らう気だ。
「夜叉…!!お前だけは許さない!!」
しかし、それで怯む鬼太郎ではない。鬼太郎は絡みついた夜叉の髪の毛を利用し、体内電気で髪の毛ごと攻撃した。その強い電撃に、夜叉は痛みで声を上げる。
「うわァァアァアアァアッ!!!」
夜叉の号哭とその身体は小夜子の演奏に溶けるように消滅していった。
「おぉ!魂じゃ…!!」
鬼太郎が夜叉を倒したことによって、夜叉に奪われた多くの魂たちが人間たちの方へと戻っていく。
「夜叉に奪われた人々の魂が、帰ってきた…」
「あぁ…」
無数の白い魂たちは、壇上で演奏する小夜子にまるで降り注ぐように淡い光を放っていた。
「小夜子さん、笑ってらぁ」
「そうだね、もう彼女の心で夜叉が生まれる心配は無さそうだ」
依然として美しい音色を奏でる小夜子の表情は、雪解けの春のように温かく微笑んでいた。
*
事件が終結し、月野小夜子は自身への戒めを含めて引退を発表した。彗星の如く現れた天才ヴァイオリニストの電撃引退は世間を暫く騒がせた。連日のようにメディアはその話題で持ちきりだ。
Aは人間界の街中にあるとある電気屋の前で立ち止まる。店頭に並べてあるテレビが映すのは、小夜子の引退についての解説や憶測をまとめた報道番組だ。番組MCの男が音楽の専門家とともに的外れなコメントをしており、彼女は苦笑いを浮かべた。
「Aさん…?」
「ん?」
聞き覚えのある声に名前を呼ばれ、彼女は視線をテレビから声の主に移す。そこには話題の小夜子がいた。
「やっぱりAさんだわ。ふふ、偶然ね」
「そうだな。元気そうで良かったよ。引退、人間界で騒がれてるようだけど、大丈夫なのか?」
「えぇ。テレビ局や記者の方たちがまだ家に押しかけてくることもあるけど、そのうち何とか収まるわ」
小夜子の話から苦労が容易に想像できるが、それでも彼女は軽く笑っていた。その様子にAは安心する。
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瑠璃 - 新しい話読ませてもらいました!この小説の夢主の性格が他の夢主と違う所がすごく好きです!無理せずマイペースにこれからも頑張って下さい(*^^*) (4月5日 12時) (レス) id: 2399b502ed (このIDを非表示/違反報告)
はなこ(プロフ) - 瑠璃さん» ありがとうございます!まさか読んでくださる方がいると思っていなかったため、とても嬉しいです。マイペースに頑張ります! (4月4日 11時) (レス) id: 6d88c11cf9 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃 - 今まで読んだ5期の夢小説の中で、一番好きです!これからも応援しています! (4月4日 11時) (レス) @page29 id: 2399b502ed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はなこ | 作成日時:2024年3月28日 1時