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「くそッ、鬼太郎…!いま、ッ、髪を、きって…!」

 Aは掌に妖力を集め剣を造ろうとするが、催眠術を解くため妖力を殆ど使い果たしている状態だ。己の無力さに歯噛みする彼女に、夜叉はほくそ笑む。

「我が術を解くため妖力を消耗させただろう。もはや手も足も出まい」
「そんな虫の息で何ができるというのよ、A!」

 夜叉と一心同体になった小夜子のヴァイオリンの音色が激しさを増していく。それに伴いAの身体も鬼太郎同様に人間たちの伸びた髪の毛に捕らえられてしまった。
 両者の身体中が雁字搦めにされ、身動きがろくに取れず抵抗できない。

「どうした鬼太郎!その役立たずの女もろとも人間を攻撃すれば良いッ!!」
「ゔぅ、ぉああ゛ッ…!!!」

 喉に入り込んだ髪の毛に気管を圧迫された鬼太郎が苦しげに声をあげる。どんなに苦しく辛い思いをしようとも、それでも鬼太郎は己が助かろうとするためにAや人間を攻撃したりはしない。その清廉潔白な彼の様子に、小夜子の心に次第に焦りが生じ始める。

「どうして助かろうとしないの…?それでいいの?鬼太郎さん!」
「ゔぅううッ…!!!」
「どうして人間のために命を捨てられるの?」

 弾きながら問い掛ける小夜子の目には、いつの間にか涙が浮かんでいた。
 
「ねえ、どうして、鬼太郎さん…!」

 小夜子の脳裏には夜叉と取引をした日が走馬灯のように駆け巡る。血反吐を吐くような努力をしても、才能を感じられない自分に対する劣等感、焦り、周囲への憎悪。報われない悲しさ。その強い想いが夜叉を生み出した。

 才能と引き換えに、小夜子は様々なものを夜叉に差し出した。そんな愚かな自分のために、人間のために、なぜ鬼太郎もAも命を懸けられるのか。


 こんなこと、本当は、もうやめたい。

「________どうしてッ!!!」

 
 鬼太郎たちのその姿が、小夜子の意思を突き動かした。

「裏切ったな小夜子!!」

 鬼太郎とAに絡みついた人間たちの夥しい髪の毛が元の長さに戻っていく。髪の毛からの拘束が解けたAは鬼太郎のそばへ駆け寄った。

「鬼太郎!大丈夫か!?」
「ゴホッ、ぅ゛っ、あぁ…!ありがとう、A。お前は休んでいくれ、僕が夜叉を倒す!」

 鬼太郎は夜叉をギッと強く睨みつけた。
 小夜子の意思が夜叉との繋がりを断ち切り、彼女の髪の毛と夜叉の本体が離れた。これで思う存分鬼太郎は攻撃できる状態となった。

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瑠璃 - 新しい話読ませてもらいました!この小説の夢主の性格が他の夢主と違う所がすごく好きです!無理せずマイペースにこれからも頑張って下さい(*^^*) (4月5日 12時) (レス) id: 2399b502ed (このIDを非表示/違反報告)
はなこ(プロフ) - 瑠璃さん» ありがとうございます!まさか読んでくださる方がいると思っていなかったため、とても嬉しいです。マイペースに頑張ります! (4月4日 11時) (レス) id: 6d88c11cf9 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃 - 今まで読んだ5期の夢小説の中で、一番好きです!これからも応援しています! (4月4日 11時) (レス) @page29 id: 2399b502ed (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:はなこ | 作成日時:2024年3月28日 1時

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