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「攻撃してみろよ!ほら、ほらァ!!」
「ぐ、ぅ…!!」
自我を失ったAの髪の毛がどんどん鬼太郎に絡みつく。元々の彼女の妖気も相まって引き千切ろうにもできない。苦しげな鬼太郎の状況に、猫娘は涙目になって叫ぶ。
「A!やめて正気に戻って!」
「無駄じゃ猫娘!Aはいま夜叉に操られて正気ではない!なんとか奴の催眠術を解かねば、鬼太郎が絞め殺されてしまうぞ!」
とにかくファンの人間たちだけでもこの場から逃さねば。鬼太郎が身を捩ろうとすると、更に彼の身体にAとは別の髪の毛が巻き付いた。
「こ、これは…!既に皆魂を抜かれている…!」
催眠術にかかり、恐ろしい形相になった人間たちが夜叉の妖力の影響によって自身の髪の毛を操り、鬼太郎に絡み付かせた。彼の体の自由がより一層奪われる。
「猫娘!父さんを連れて逃げろ!」
猫娘に目玉おやじを預け、鬼太郎は足を踏ん張って耐えるが、とうとう力に押し負かされた。
「さぁ!お前の魂もよこせ!!」
Aを筆頭とする人間たちに囲まれ、夥しいほどの髪の毛たちが束になって鬼太郎の口に侵入していく。魂を抜こうと喉を這いずる感覚に鬼太郎は苦しげに呻き声を上げる。
「ハハハ!妖怪のくせして人間は決して傷つけないという、それが、鬼太郎貴様の弱点だ!」
「そうなの?自分の命がなくなってもいいの?なぜ、攻撃しないの?」
小夜子はヴァイオリンを弾きながら、鬼気迫る表情で鬼太郎に問いかける。しかし、彼はされるがままで一向に反撃する様子はない。
「フフフ…!得意の毛針を見舞ってやればいい!」
手足を拘束されても毛針や体内電気なら可能だ。だが鬼太郎は誰も傷つけさせまいとたった独りで耐えている。
「それでいいの鬼太郎?貴方、死ぬのよ?」
「リモコン下駄は?ちゃんちゃんこは?」
夜叉は揶揄うように鬼太郎に言葉を投げかけるが、小夜子は焦れたように問うた。彼女が演奏するヴァイオリンの音色も、どこか固く、張り詰めた糸のような緊迫感を纏っている。
「きた、ろ、ゔ…を、放せぇえッ!!!」
自我を失っていたAが、突然叫び出す。その瞬間、夜叉の妖気で伸びた彼女の髪の毛だけシュルシュルと元の長さに戻っていく。
「この女、術を断ち切り自力で魂を取り戻したというのか…ッ!!フハハ…、だがもう遅い!!」
「はぁ、ッ、うるせー…!」
催眠術を切っただけでも相当な体力を消耗したのか、Aの表情は疲労困憊だった。
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瑠璃 - 新しい話読ませてもらいました!この小説の夢主の性格が他の夢主と違う所がすごく好きです!無理せずマイペースにこれからも頑張って下さい(*^^*) (4月5日 12時) (レス) id: 2399b502ed (このIDを非表示/違反報告)
はなこ(プロフ) - 瑠璃さん» ありがとうございます!まさか読んでくださる方がいると思っていなかったため、とても嬉しいです。マイペースに頑張ります! (4月4日 11時) (レス) id: 6d88c11cf9 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃 - 今まで読んだ5期の夢小説の中で、一番好きです!これからも応援しています! (4月4日 11時) (レス) @page29 id: 2399b502ed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はなこ | 作成日時:2024年3月28日 1時