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猫娘によると、10人目の患者は彼女が働く店の常連客だったらしい。お見舞いのために彼の病室を訪れると、昔嗅いだことがある妖怪の匂いが微かに漂っていたという。
「一体、何の匂いが?」
「夜叉よ!」
猫娘の答えとその勢いに、目玉おやじは驚いて茶碗風呂の中でひっくり返った。全身がカフェオレに塗れ、茶色く染まる。しかし、目玉おやじはきにせずに気にせず「や、夜叉じゃと…!」と事態を危ぶんだ。
「まさか…」
「おい、夜叉っていやぁ…」
「あぁ…、恐ろしい強敵だった…。でも、夜叉はあの時倒したはずだ。猫娘の勘違いじゃ…」
「いや、そうとも言いきれんぞ」
「え?どういう意味ですか?」
かつて完全に倒したはずの強敵が、どのようにして今になって甦ったのか。鬼太郎たちの頭には疑問符が浮かぶが、すぐにその答えをコーヒー風呂から上がった目玉おやじが告げた。
「夜叉は元々人間の心から生まれた邪悪な鬼とも言われておる」
「人間の心から?」
「嫉妬や憎しみなどの醜い心じゃ」
「だとしたら、再び夜叉が現れたとしても、不思議じゃないってことね!」
猫娘はそう納得したが、Aや鬼太郎には俄かに信じられなかった。はたして夜叉ほどの強敵が人間の心から生み出されるものなのだろうか。
「しかし、事実ならば一大事じゃ!また大勢の人間が、魂を食べられてしまうことになるぞ!」
あくまで憶測なら、それに越したことはない。寧ろそうである方が何倍もいい。
とにかく妖怪の仕業であることは間違いない。鬼太郎は猫娘な方へ向き直り、真剣な表情で問うた。
「猫娘!何か手がかりになることはないのかな?」
「え?うーん、そう言われても…」
猫娘は言い淀む。常連客である人間以外の被害者の面識があるわけではない。襲われた人間は年齢も性別もバラバラだ。夜叉が無差別に事件を起こしているなら犠牲者は現在よりもっと出ているはずだ。となれば、夜叉は恐らく何か制限がある場所や時間でしか魂を奪えないのであろう。
手掛かりがない。そう言おうとした矢先、「それがあるんだな〜!」と自信たっぷりな声が玄関から聞こえた。
「お待たせ〜!天下の二枚目ここに登場!!」
ねずみ男が得意げな顔で姿を現した。彼の台詞にAは「待ってねえよ」とにべもなく返す。加えて猫娘はすかさず彼に飛びかかり、顔面を思い切り引っ掻いて地面へと突き落としたことで、ねずみ男の悲痛な声がそこら一帯に響き渡った。
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瑠璃 - 新しい話読ませてもらいました!この小説の夢主の性格が他の夢主と違う所がすごく好きです!無理せずマイペースにこれからも頑張って下さい(*^^*) (4月5日 12時) (レス) id: 2399b502ed (このIDを非表示/違反報告)
はなこ(プロフ) - 瑠璃さん» ありがとうございます!まさか読んでくださる方がいると思っていなかったため、とても嬉しいです。マイペースに頑張ります! (4月4日 11時) (レス) id: 6d88c11cf9 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃 - 今まで読んだ5期の夢小説の中で、一番好きです!これからも応援しています! (4月4日 11時) (レス) @page29 id: 2399b502ed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はなこ | 作成日時:2024年3月28日 1時