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「ごめん…、君がここまで悲しむなんておもっていなかったから……」

 眉を下げて困った表情を浮かべた鬼太郎は、一先ずAを落ち着かせるために彼女の身に何気なしに触れた。

「!」

 その瞬間、計り知れない孤独感や寂寞が稲妻のように鬼太郎の身体中に駆け巡る。彼女の心の底からの辛さや苦しみ、悲しみたちが妖気と共鳴しているかのように伝っていく。

(なんて、かなしい妖気なんだろう……)

 そこで鬼太郎は漸くAの心を理解した。誰にも相手にされず、除け者にされ、甘えられる両親もいない哀しみを。
 
 本当に彼女は今まで独りぼっちで当てもなく彷徨っていたのだ。いつしか自分を温かく受け入れてくれる者を探して。

(ぼくには父さんや蒼兄さん、横丁のみんながいるけど、でも、この子は……)

 小さく縮こまりながら肩を震わせるAを見て、鬼太郎はツキンと胸が痛んだ。


 鬼太郎には、我が子を想うあまりに目玉だけで蘇った父親がいる。それはとても小さな身体だが、それ以上に温かく、愛があって、鬼太郎にとっては掛け替えの無い頼れる父親であった。もちろん目玉おやじだけではない。横丁の仲間たちだっている。いつも鬼太郎を何かと心配し、これでもかというほど世話を焼いてくれている。

 だが目の前のAはどうであろう。そう自分に問いかけながら、鬼太郎は彼女をじっと見つめる。

「ぐすっ、ふっぐ、ううぅ…」

依然として泣き止まないAを見て、何故だかわからないがするりと鬼太郎の口から言葉が出た。

「大丈夫だよ、ぼくがいるから」
「ぐず、うぇ、…?」

 潤んだ彼女の両目が鬼太郎を真っ直ぐに射抜いた。鬼太郎は視線を逸らすことなく、優しい笑みを浮かべる。

「ぼくがきみのそばにいるから、だから、泣かないで」
「ほ、ほんと…?」
「うん…!」

 鬼太郎は徐にAに向かって手を差し出す。

「きみが独りで泣かないように、ぼくがずっとそばにいるよ」
「ぐずっ、ゔん、っ!」

 顔を仄かに桃色に染めたAは、嬉しそうにはにかみながら鬼太郎の手を握り返した。

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瑠璃 - 新しい話読ませてもらいました!この小説の夢主の性格が他の夢主と違う所がすごく好きです!無理せずマイペースにこれからも頑張って下さい(*^^*) (4月5日 12時) (レス) id: 2399b502ed (このIDを非表示/違反報告)
はなこ(プロフ) - 瑠璃さん» ありがとうございます!まさか読んでくださる方がいると思っていなかったため、とても嬉しいです。マイペースに頑張ります! (4月4日 11時) (レス) id: 6d88c11cf9 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃 - 今まで読んだ5期の夢小説の中で、一番好きです!これからも応援しています! (4月4日 11時) (レス) @page29 id: 2399b502ed (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:はなこ | 作成日時:2024年3月28日 1時

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