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「あ、鬼太郎だ」
「おやじさんのお遣いかしら」
鬼太郎は本を読むタイプではないが、目玉おやじは意外にも本や新聞、ニュースなどを読むし、目新しいものには興味を示す好奇心が旺盛な面がある。今回もそのお遣いか何かだろう。猫娘とAは気になって鬼太郎の後を追うように書店へ向かった。
彼女たちが店内を覗いてみると、レジには既に長蛇の列が。そしてその一番前に佇むのはなんと鬼太郎で、財布を片手に何やら困ったような表情を浮かべていた。
「また、今度にします」
どうやら所持金が足りなかったようだ。鬼太郎は数秒間迷った後、申し訳なさそうに店員に言い、店を出ようと出口へと向かった。
「鬼太郎?」
「よっ!」
「猫娘に、A…」
猫娘とAが鬼太郎に声を掛ける。ここで会うと思ってもみなかった鬼太郎は、少し驚いた様子だった。
*
「いやはや、すまんのぅA」
「いーよ。何てったって、困った時はお互い様だからな」
鬼太郎の家にて、お目当ての本を前にした目玉おやじは「助かったぞ」と彼女に礼を言う。Aは猫娘と顔を合わせ、意味ありげに笑った。
鬼太郎が事情を話すと、Aは快く本の足りない金額を彼に貸した。そのため無事に目玉おやじが求めた本を購入し、今に至る。
「本当に助かったよ。ありがとう、A」
「どういたしまして」
事なきを得た鬼太郎がホッとしたように笑った。
「Aや猫娘には感心するよ。二人とも、色々な仕事をしてて、人間の世界にうまく溶け込んでいるし」
「っていうより、鬼太郎がズレてるのよ」
「それは言えてるな」
二人の指摘に鬼太郎はそうかな、と思い返すが全く身に覚えがない。自覚がない息子のその様子に、目玉おやじは彼女らに強く同意した。
「そうなんじゃ!こいつは人が良すぎるし世間にも疎い!父親としてお前の行く末が心配でならんよ……、そうじゃ!いっそ、猫娘を嫁にもらってはどうじゃ?」
「!」
「お、いいなそれ。式のスピーチはあたしがやるぜ!」
「え?猫娘を嫁に?」
目玉おやじのその台詞に三者三様の反応を見せる。
鬼太郎に想いを寄せる猫娘の脳内には、純白のタキシードに身を包む鬼太郎の姿や、親友として感動のスピーチをするAの姿がいっぱいに浮かぶ。猫娘は頬を桃色に染めて満更でもないようだ。
「悪い冗談はよしてくださいよ」
「な゛ッ」
猫娘の幸せな妄想は、鬼太郎のその言葉でぶち壊されたのだった。
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瑠璃 - 新しい話読ませてもらいました!この小説の夢主の性格が他の夢主と違う所がすごく好きです!無理せずマイペースにこれからも頑張って下さい(*^^*) (4月5日 12時) (レス) id: 2399b502ed (このIDを非表示/違反報告)
はなこ(プロフ) - 瑠璃さん» ありがとうございます!まさか読んでくださる方がいると思っていなかったため、とても嬉しいです。マイペースに頑張ります! (4月4日 11時) (レス) id: 6d88c11cf9 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃 - 今まで読んだ5期の夢小説の中で、一番好きです!これからも応援しています! (4月4日 11時) (レス) @page29 id: 2399b502ed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はなこ | 作成日時:2024年3月28日 1時