検索窓
今日:7 hit、昨日:10 hit、合計:812 hit

ページ19

数日後、例の沼では白石たちがせっせと塚の掃除をしていた。水虎はちゃんと元通り祀られており、壊れた塚も白石の言葉通り責任を持って修復されていた。

「黒田くん、もっと力を入れて磨いてよ」
「あ、あぁ」
「さ、次はこっちだよ!」

 以前のおどおどとした態度の白石はもうどこにおらず、彼は率先して掃除に取り組んでいた。
 あの様子なら、もう水虎も目覚めることはないだろう。
 沼から少し離れた草むらでひっそりと彼らを見守っていた鬼太郎、目玉おやじ、Aは安心したように笑み浮かべた。

「行きましょうか。父さん、A」
「うむ」
「だな」

 鬼太郎たちは踵を返し、横丁へと続く道にと向かって行った。

 
 夕暮れ時。横丁への道すがら、Aはふと思い出したように声を上げた。

「あ、そういや、何でか分かったぜ」
「何がだい?」
「前に言った、紅茶の店の店員のことだよ」
「あぁ、お前が言ってたあの人間のことか」

 Aの言葉で鬼太郎が思い出したのは、顔も名前も知らないが美丈夫ということだけは知っている人間の男だった。イケメンの話題を挙げてはだらしなく顔を緩ませていた数日前の彼女が懐かしい。
 もう終わったことだと思っていたために気分がよくない。鬼太郎の声のトーンが無意識に下がる。

 息子の変化に気づいていないAに、目玉おやじはオロオロとしながら心配げに二人の様子を見守っていた。

「で?その人間の何が分かったんだい」

 ぶっきらぼうに鬼太郎は問いかける。イケメンが絡むと思考レベルが急激に下がる彼女のことだ、どうせ碌なことではないだろう。そう思っていた鬼太郎だが、予想が見事に外れた。

「いやさ、あの色男、優しそーな雰囲気が鬼太郎に似てたんだよ」
「え?」

 茜色の陽に照らされたAが、ふわりと微笑んだ。

 思ってもみなかったAの発言に、鬼太郎の足が止まる。しかし、彼女は気づいていないのか「妙に記憶に残ってたけど、理由が分かってすっきりしたぜー」とそのまま一人で満足して歩き続けていた。

 取り残された鬼太郎は、徐にその場にしゃがみ込む。

「……はぁ…」

 深い溜め息をつき、そんな息子の様子に目玉おやじは「大丈夫か?」と髪の毛から出て声をかける。

「大丈夫です、父さん…。ただ、」
「ん?」
「いえ…。何でもないです」

 鬼太郎はすぐに立ち上がり、彼女の元へと小走りで向かった。彼の耳がほんのり赤いのは、夕陽のせいか、それとも。

ビビビ!!ねずみ男!→←・



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (3 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
3人がお気に入り
設定タグ:ゲゲゲの鬼太郎 , 5期
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

瑠璃 - 新しい話読ませてもらいました!この小説の夢主の性格が他の夢主と違う所がすごく好きです!無理せずマイペースにこれからも頑張って下さい(*^^*) (4月5日 12時) (レス) id: 2399b502ed (このIDを非表示/違反報告)
はなこ(プロフ) - 瑠璃さん» ありがとうございます!まさか読んでくださる方がいると思っていなかったため、とても嬉しいです。マイペースに頑張ります! (4月4日 11時) (レス) id: 6d88c11cf9 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃 - 今まで読んだ5期の夢小説の中で、一番好きです!これからも応援しています! (4月4日 11時) (レス) @page29 id: 2399b502ed (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:はなこ | 作成日時:2024年3月28日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。