食わず嫌いな君と僕

めちゃくちゃめちゃくちゃやん？ ページ7

藤浪side

入ってきてから３０分、ひたすら投げ込む女。
そして俺はずっとイライラしてる。だってありえへん、1球1球投げるフォームがバラバラでコントロールも俺が言える義理やないけど、最低レベルや。完全にボール球しか投げてへん。それでよくキャッチャー以外出来るなんて言えるのか全然意味が分からん。

能見さんは出てって、ここにはコイツと俺とブルペンキャッチャーだけ。

投げる度に馬鹿みたいになんか言ってて、それにも腹が立つ。

「wow.I'm a genius!!」

ほら、アホ面しながら戻ってきたボールキャッチしてまた構える。こんどは能見さんのフォームまんま。


こんなやつに試合で投げられてたまるか。

俺の方が何倍も何倍もマシやろ。


「おい」

気づけば立ち上がって声をかけていた。そんなつもりやなかったのに。

「ちょっと待って。今投げてるから」

いきなり声を掛けられて少し不思議そうな顔をしながら、それでも投げようとする。

「やめろ。今すぐそっから出てけ」
「え？」

ネットを超えて、目に前に立つ。
グローブを持ちながら見上げてくるのにも、睨み付ける様な目をしてくるのにも、自分で意味が分からん位腹が立った。

「投げんなって言うてんねん！」


あぁ。
いつもの俺やないな。

どっかでボンヤリそう思いながら、おもっきし怒鳴った自分に満足してた。

こんなやつより、俺の方が投げれる。


役に立つ。


勝てる。

まだ大丈夫。



「出てけや」



俺の方が……




「いやよ。絶対に」



満足したあと女と目があった。
信じられないくらい、冷たい目の女と。

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